家庭の窓
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ANAの機中で手にした冊子の中に,野口健氏の一文が掲載されていました。全体の内容は記憶から漏れ落ちていってしまいましたが,1つだけ印象に残った言葉がありました。父親から受け取った言葉ということでしたが,「物事にはA面とB面がある」という言葉です。
物事には裏と表がある,という言い方に慣れていたので,とても気になって記憶に刻まれています。A面,B面とは,アナログレコードの表裏の面の呼び方です。その他にも使われるのかよく分かりません。シングル盤では,タイトル曲をA面に記録することが多く,B面はその「おまけ」的な意味合いであることが多く見られた。このためラジオ放送などでは,A面の収録曲だけ放送されることが多かったそうです。B面の曲は格下という扱いが普通でした。
物事には裏表があるという言い方では善悪の価値が投影されますが,A面B面という言い方では優劣の価値が付与されるものと思われます。B面は取るに足りないものではあるが,悪のように存在を否定され排除されるものとまでは追い詰めない優しさが感じられます。
ところで,「物事にはA面とB面がある」という言い方は,どの程度広まっているのかということが気になります。野口氏の父の発想の産物であるのか,それともある程度世間に行き渡っているものか,寡聞にして,初めて目にしたので,見当がつきません。ネット検索をしてみました。
野口健公式ブログには,こういう記事があります。
《以下転載》
2011年06月28日本日の産経新聞に野口の記事が掲載されました。本日の産経新聞に、野口の沖縄での活動の記事が掲載されました。
『アルピニスト野口健氏が講演「権力は国民のために」沖縄「正論」友の会セミナー』
沖縄「正論」友の会の第7回セミナーが27日、那覇市のホテル「沖縄かりゆしアーバンリゾート・ナハ」で開かれ、アルピニストの野口健氏が150人の参加者を前に「国家とは何か?〜世界の現場から考える」と題して講演した。
野口氏は東日本大震災の犠牲者への黙(もく)●(=示へんに寿の旧字体)(とう)の後、エベレスト登頂や環境問題などに取り組む自身の姿をDVDで紹介した。その上で、遠くから見た富士山の景観と身近で目にしたゴミの山の光景を対比し「物事にはA面とB面がある。B面を知ることが大切。B面を通して本当の姿を見るべきだ」と強調した。
また、これまでの海外生活経験から「権力は国民のために使うもの。今の(日本の)政治家にはそれが欠如している」と批判した。
さらに26日に沖縄県糸満市で戦没者の遺骨収集を行い、30余柱の遺骨を収容したことを踏まえ「国のために亡くなった先人の死を尊重すべき。それを怠ると国は必ず滅びる」と訴えた。
《以上転載》
また,ジャイカワールド2011年MAY No.32 にも,野口氏の話が,次のように掲載されています。
昔から、外交官の父親がよく口にしていた言葉があります。「物事にはA面とB面がある。観光客はA面だけ見て帰ってしまうが、本当の姿はB面を見ないと分からない」。小さい時から海外で暮らす機会が多かったのですが、そんな父の教えを胸に、どこに行っても一つの国のあらゆる部分に目を向けるよう心掛けてきました。
また別のサイトでは,
父は、 「物事にはA面、B面がある。A面は自然に目に入ってくる。B面は見ようとしないと目に入らない。だけど、世の中往々にしてB面にこそテーマがあるんだ。おまえもそこをよく見ろよ」 とよくいう。
とあります。
どうも,野口氏が発信者のようで,普通に流布しているとは思われません。そのことにこだわるつもりはありません。それならそれでいいというだけです。
この言い方について,周りの人と話していると,この言い方が通じるのはレコード世代に限定されるのではないかという声が出てきました。制約があるとはいえ,1つの言葉を仕入れたことになるので,使うのに相応しい場に望んだ際に,さりげなく使ってみようかなと思っています。
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