《束の間に 交わす言葉を 温める》

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 ある公的な委員を引き受けています。役職にあるので,いろいろな用件が発生します。希有のことですが,本省の課長が訪ねてきて,意見交換をするから出席するようにという要請を受けました。初めてのことで,詳しい内容を聞いていないので,どのような対応をすればよいのか,皆目見当も付きません。視察ということであれば,現場の声を具体的にお聞かせすればいいのでしょう。また,本省が行っていることに対する意見を述べることが求められているのなら,それなりの大局的な視点による予備考察が必要になります。
 新規な場面に向かうときには,あれこれ状況を想定してしまいます。身の処し方に対する準備をしようということです。準備無しでは慌てる事態を招くかもしれません。立ち往生というみっともないことにならないようにという思いがあります。ただ,あまり突き詰めることはしません。行き当たりばったりで,なるようになる,なんとかなるという,いい加減さもあります。置かれた状況を素直に受け入れていけば,適当に対応することができるという経験をしてきたからです。
 火事場の馬鹿力という言葉があります。このように,文章を書いているときに,その流れにフイッと入ってくる言葉を思いつくように,予定していない展開が生まれてきます。後で振り返ると,あの時あんなことがよく言えたな,と我ながら驚くことがあります。準備できることではありません。強いて言えば,なけなしの引き出しの隅っこから引き出してきたという意味で,なんとなく準備をしていたことになるのかもしれません。一夜漬けではなく日頃の修練が力になるということです。準備の仕方が大事なのです。

 段落変わって,後日談です。時間刻みの日程で動いている視察では,まとまった意見交換もできません。活動状況を話せと言われても,趣旨から効果までをすべての事業について説明することは望まれているわけではありません。特徴的なことを述べよという試験問題的な求めに対して,何が特徴なのかという物差しを確認し合うことがなければ,すれ違います。聞きに来たのであれば,聞く側が何が聞きたいのかを明らかにすべきです。そうではなくて,聞いてやるから,言いたいことがあれば言ってみよ,という流れです。
 預かっている組織のマンパワーの概要と,今年度始めた事業に付いて,そのねらいと進捗状況を簡単に説明しておきました。聞く側が持ち合わせている受け皿のどれかに盛りつけることができたかどうか不明ですが,それほど気の利かない説明になりました。伝えたのですが,果たして伝わったのか,心許ないことですが,それを決めるのは先様ですから。
 意見交換という流れに入って,制度上で勘案してほしいことを2点,述べておきました。常日頃から思っていたことです。本省でなければ対処不能なことですので,お願いという形で聞いて頂きました。私が相手の立場だったら,何らかの手を打つはずのことと思っていたからです。でも,エリートの立場では,どうでもいいという範疇の引き出しに入れられることでしょう。それでも,こちらとしては,少なくとも,部外者同士のぐちぐちした話ではなく,部内での話ができたという放出感はありました。言うべき相手に言ってやれたというさわやか感があっただけ,温かい交換になってよかったと思っています。
 大した想定問答を用意することもしませんでしたが,それなりの展開にはなったのではないかと手前勝手に思っています。小一時間,アドリブの放談ではあったのですが,5人中の1人としての役目は果たせたようです。

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(2013年01月27日号:No.670)