家庭の窓
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住宅用火災警報器の設置促進のため、消防職員が戸別訪問します。職員が制服を着用し身分証明書と立入検査証を提示しますので、御協力をお願いいたします。そういう回覧が回ってきました。男性の消防職員の写真が見本のつもりで掲載されています。連れ合いが部屋を片付け出しました。いつ訪問されるのか分からないので,嫌がっています。職務上のこととはいえ,他人から台所や寝室などに踏み込まれるので,いい気はしないのでしょう。
自分が消防職員であったら,警報器を見るのが主で,部屋の様子などには何の関心もなく,目に見えてしまっても何の思いもしないだろうと思います。このお宅は整理されているとか,散らかっているとか,よほどでなければ,見ないでしょう。これは男の視線です。女の視線はどうなるかといえば,なめるように見届けていきます。連れ合いは自分だったらという視線を職員に移しているから,部屋の隅々まで見られるという気持ちになるのでしょう。
買い物をする際の男女の動きを想像してみます。男の買い物は,買うモノを決めているので,真っ直ぐに売り場に直行し,買い物を済ませると,さっさと帰ります。一方,女の買い物は,買うモノを決めていても,途中にある別のモノの売り場もしっかりと目に入れていきます。夫婦で出掛けた際に,後で,妻から「あそこにあったモノは何だったのでしょう」と語りかけられても,夫は「何かあったか」と返事をすることになり,何も目に留めてはいないことを告白するのみです。男女の目線には違いがあります。
職務上の目線というのもあるでしょう。消防という目線で見ると,ストーブやコンロ,電気機器や配線といった部分に目がいくので,それ以外は見えていないはずです。あれこれ余分なものを見ていては仕事にならないはずです。個人がよそのお宅を訪ねるときとは違っています。プロの目は専門の目ですから,視野は狭くなっています。それほど気にしなくてもいいと思いながら,整理されていく様子を見届けています。
もう一つ,「ある区域をこの月に回ります。戸数が多いと半年先にシフトすることもあります」と通達されて,いつ訪問されるのかが不確定になっています。いつ来るか分からないという曖昧さが,気疲れの元になります。じらされるというか,今日か明日か,落ち着きません。生活上出掛けることもあるので,訪問とすれ違うこともあるでしょう。二度手間になると,職員に迷惑をかけることにもなります。相手が勝手に尋ねてくるんだから仕方がないといえば,それまでですが。
日々単調に繰り返している暮らしに,普段と違う出来事が飛び込んでくると,気持ちのざわめきが起こります。
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