《はみ出しも 少しだからと 不用心》

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 「デジタコ搭載車ですので法定速度を遵守します。お急ぎの方はお先にどうぞ」。コンテナトラックの後部扉に,囲み枠の形で,書いてありました。後ろに並んで信号待ちをしていると,自然に目に飛び込んできます。何気なく読んでしまいますが,ふと妙だなという感覚に捕らわれました。
 法定速度を遵守する理由として,デジタコ搭載しているからというのは妙です。デジタコ搭載であろうとなかろうと,法定速度遵守は当たり前です。デジタコ搭載でなければ法定速度は遵守しないのですが,搭載しているばかりに遵守せざるを得ませんと言っているようです。デジタコ搭載によって走行速度が記録されることが,足かせになっています。記録が残らない場合は,少々の速度オーバーをしても,証拠がないと逃げられるということでしょう。
 自分は法定速度を遵守しますが,急いでいる方は法定速度以上で追い越していって下さいというのも,妙です。法定速度は追い越さなければならないものであると暗に言っています。そこで,邪魔になるようでしたら気にせずに追い越して下さいと,他車に対して法定速度の超過を促しています。自分だけが法定速度遵守をしていると言いたげです。
 遵法闘争というアピール方法があります。法律を厳格に守ることによって,状況の停滞を発生させて困らせるという,やむにやまれない方法ではあるのですが,いかにも不思議な主張の仕方です。娯楽時代劇映画でよく登場している因業金貸しは,借金証文をたてにして厳しく取り立てをする役回りです。約束を守るのが遵法であれば,取り立てる側に理があるのですが,杓子定規な硬直さが何とも合点がいかないという感覚があります。こういう事例の展開から,遵法とは窮屈であるという感覚を一般化することはできません。
 理想と現実の違いとか,建て前と本音とか,義理と人情とか,日本社会は二本社会のようで,一本の筋に沿って動くものではないようです。原則として法は守るべきである,ただし,例外もある。そういう融通無碍な認識がまかり通っています。ただし,油断すると,いきなり原則的な扱いが適応されることがあるので,ご用心。

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(2013年04月28日号:No.683)