《言い換えを してるつもりで 意味がずれ》

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 関心という英語インタレストinterestは,inter-esse(インテル・エッセ)であり,「共にある」「相互的に存在する」というラテン語のフレーズであるということです。日本語の訳とは当たらずとも遠からずということのようです。共に存在することと心を関わらせることがどれほどぴったりと重なっているかということです。心を関わらせる相手が人ならば,その人と共にいたいということは自然の成り行きでしょう。しかし,成り行きというつながりは十分に認めることができますが,同義であるというわけにはいきません。
 言葉の意味は多様です。外国語の辞書を引くと,一つの外国語に対して、番号付きでたくさんの意味が並べられています。その言葉を検索している場面に最も適合する意味を探します。並んでいる意味がかけ離れていて,とても同じ言葉の意味とは思えないこともあります。元の意味は一つであったのでしょうが,現実に言葉を使おうとするとき,ぴったりの言葉がなくて,似ている言葉で代用せざるを得ないことがあります。その代用が広く通用していくと,やがて,その言葉の意味として認められていくでしょう。
 言葉は意味の拡散を起こしていくことができます。そのために,母国語でない人によって外国の言葉が話されるときの,当たらずとも遠からずというあの微妙な意味のずれは,言葉の状況に応じた多義性を十分に掌握していないせいであり,仕方のないことです。翻訳書の何かしら意味の掴みにくさも,多くの人が経験していることです。
 限られた語彙数であらゆることを表現するためには,言葉の多義性を必要とします。語彙数が限られるのは,音声が限られているからです。日本語で言えば,清音・濁音・撥音などの数が限られており、簡単な2音から,あい,あう,あえ,あお,いあ,いう,いえ,いお,うあ,うい,うえ,うお,・・・という組合せも限りがあります。どうしても、同音異義語というものも出てくるようになります。
 一つの言葉がどのような意味を伝える使命を帯びているか,それは発信者に依ります。一方で,その言葉をどのような意味で受け取るか,それは受信者に依ります。言葉の意味が多様であるとき、当人同士は間違いなく伝わったと思っていても,勘違いが紛れ込むことは普段から経験済みです。言葉の伝達の曖昧さを避けるために,状況や流れ,相手の表情や態度などを加味して意味を読み取っていきます。
 言葉の危うさを知っていないと,とんでもないことになります。公人が時に不注意な言葉を発して進退きわまっていますが,腹八分ではなく口八分にすることを怠っているからです。ただ,一つの話からワンセンテンスだけを抜き出して、前後に少しの言葉で解説を加えて意味のずれを画策するような手管もあるので,慎重な言葉選びをした方が無難です。

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(2013年07月14日号:No.694)