《経験し そういうものと 知恵がつき》

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 新聞と一緒に飛び込んでくるタウン誌があります。何気なく開いて,どんな内容のことが載っているのか,目を通してみます。指の話でした。
 「女性は男性の手に自然に目がいく。手といっても実は指を見ていることがほとんどで,長い指を女性は好む傾向が強い。手指は形態学的には複雑な動きに耐えるようになっているので,字を書く,絵を描く,楽器を弾くなどするとボケない,長生きするといわれる。東洋医学や推命学では,薬指は男性にとって重要な指相であり,人差し指と比べて長ければ長いほど男性ホルモンが強く多く,精力が並以上であるとされている。韓国の研究では,徴兵された若者で,薬指が長い男性ほど,危険度の高い軍に志願し,精神の質と薬指の関係を示した」。
 統計的な関係であるのでしょうが,論理が伝わってこないので,眉唾物という感想です。経験則という知恵がありますが,どの程度の信頼性があるのか,千差万別です。人は経験によって物事を見て考え判断するプロセスを選んでしまいます。騙された経験が強い人は,「人は騙そうとするものである」という論理の色眼鏡を掛けることになります。自分の経験が無い事柄については,人々が持ち出してくる経験を取り入れていきます。噂話を信じるといったことと同じです。
 人には分かりたい,納得したいという欲望があります。訳が分からないと落ち着かないのです。どうしてこんな目に会わなければならないのか,良くも悪くも,その理由らしいことが知りたくなります。血液型が理由になったり,手相が運命を押しつけてきたりします。「だから,こうなんだ」と納得します。説明がつけばいいのであって,説明の内容の正しさの検証などは不用です。というよりも,正しさの証明は,多くの場合,ほとんど無理であることは分かりきったことです。それらしい言い訳で十分としています。
 世の中とはそういうもの。それが,人生経験の知恵です。その知恵を証明してみろというのは野暮です。証明できたら,それだけのことで,何も変わりません。証明できなかったからといって,間違いとはなりません。あくまでも証明に拘るのなら,信じなければいいのです。もちろん,物事には例外は付きものであり,人の世では,絶対ということはないと思う方が賢明です。絶対は神の世界にあるとしておけばいいのです。
 薬指が長いから,B型だから,水瓶座だから,昭和生まれだから,九州男児だから,理系だから,田舎育ちだから,既婚者だから,経験者だから,こうなった。この関係をまとめてつなぐことは不可能です。途中の論理はどうでもよくて,「○○だから,●●である」という形式が整えばいいのです。その場その局面で,もっともらしいことを持ち出して納得していれば,精神安定上の処方として十分でしょう。考えすぎたら眠れなくなります。

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(2013年09月01日号:No.701)