家庭の窓
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夏休みの恒例番組であるNHKの「子ども電話相談」を,ときどきカーラジオで聞くことになります。子どもたちの素直な疑問にどのように専門家が解答していくのか,結構楽しく耳を傾けています。ある日の質問が,記憶に残っています。男の子が大好きな恐竜についての質問でした。
恐竜が絶滅した理由は巨大な隕石が衝突して地球環境が激変したこととされています。その説を前提としての質問でした。「もし,隕石が衝突していなかったら,恐竜はいつまで生きていたんですか?」という疑問でした。解答者は面白い質問だと言いながら,少し困っていたようです。
恐竜はある時期にぱたっと消滅しました。当然のことに,なぜだろうという疑問が持ち上がります。あれこれ考えて,環境の激変・急変が起こったのでは?,地球規模の大がかりな激変とは?,それは外部からの不意の出来事であり,隕石の衝突という現象に行き着いていきます。隕石の衝突の証拠があるということになると,それで間違いないということで,一件落着となります。分かってしまった,となります。いったん片がついてしまうと,そこでその問題は打ち切りとなります。
子どもの提示した「もし隕石が衝突しなかったら」という疑問は,終わっていた問題に新たな蘇りを引き起こしました。歴史的事象にイフ(if)はないのですが,知的な作業としての考察は可能です。さらには,隕石衝突説に対する再検証をすることにもなります。本当に隕石衝突に依るのか,その他の可能性はないと言えるのか,ということです。その作業に入るためには,いったん隕石衝突がなかったらという,白紙の状態に戻る必要があります。
質問した子どもはそこまでは想定してはいないでしょうが,その素直な発想が,新たな知見を引き出すことになるかもしれません。発見や発明の扉は,その時点で持ち合わせている知識を否定・消去することで,全くの白紙の状態から再考察するという作業で開かれてきました。
子どもの質問に解答者がどのように答えたか,運転に集中していたので,記憶しておりません。専門家には,隕石説以外の絶滅理由がいくつかあったという記憶があるでしょうから,かもしれないという可能性をいくつか説明したのではないかと思います。
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