《生きる身を 脳は後追い 考える》

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 あくびが出ると,眠気が差してきたと思うでしょう。あくびは眠りへの誘いであるという理解です。あくびをしている子どもに,早く寝なさいと促すのが普通ではないでしょうか。あるとき,あくびの短い解説に出会って,勘違いを気付かされました。あくびの行動を振り返ると,先ずは大きく口を開きます。口の周りの筋肉を思いっきり伸ばします。さらには,いっぱいに空気を吸い込み吐き出します。深呼吸するために胸の筋肉を大きく伸縮させます。いずれもかなりの刺激になります。
 眠気に対して,この刺激は覚醒の働きをすることになります。眠気が覚めるのです。あくびの目的は,身体が刺激を受けなくなって眠りに入ろうとするとき,脳があくびの命令を出して,起きるように刺激を与えようとすることです。あくびは起きろという脳からのメッセージなのです。確かにあくびは眠くなったときに出るので,あくびと眠りは相関関係にあるのですが,相乗的ではなく,反発的な関係にあるのです。自分の身体のことについて,誤解をするとはどういうことでしょう。
 悲しいときに涙を流します。ところで,身体が涙を出すという活動をするから,それに合うように悲しいという感情が生まれるといわれます。脳が,「涙が出る」という反応と,「悲しい」という感情を一致させないといけないと判断するというのです。「事実涙が出てるのだから悲しいに違いない」ということです。その他に,熱いものに触ったとき,さっと身を引きますが,熱いと思うのは避けた後になるということもあります。脳は自分の身に起こっていることに後追いして反応し,判断を下しているようです。
 仕事に関する実験があります。単調でつまらないという作業を,二つのグループに分けてやってもらいます。一方は,報酬として時給2,000円を,もう一方は時給500円を払うという約束をして,差を付けました。その上で,どちらのグループが仕事を楽しく感じてやれたかを確かめました。高い時給をもらうグループの人たちであろうと思われたのですが,意外にも,ただ同然の報酬で働いたグループの人たちが楽しく仕事をしたというのです。「こんな低報酬でやっているのだから,報酬目的の仕事ではあり得ない。仕事が楽しいからに違いない」と脳が意味づけを探し出していたのです。自己満足といえばそれまでですが,脳は自分の行動の意味づけを,よりよいように考えています。
 ものは考えようであり,愚痴らず,笑顔で,真面目に取り組んでいけば,きっと良い人生であると脳が考えてくれるのではないかと期待することにしましょう。

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(2014年02月02日号:No.723)