《あるはずと 探してみると ないことも》

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 文字を連結することで言葉ができますが,相性があるようです。例えば,前月,今月,後月とは言わないようです。前月を先月としても,後月はなくて、来月です。ところが,野球の場合は,先攻,後攻といいますが,先攻,来攻とは言いません。前菜はありますが,後菜はないようです。もちろん。前任,後任,前車,後車,前妻,後妻などはあります。
 前後と並べて前後左右と言われる左右はどうでしょう。右折,左折,右陪席,左陪席,右大臣,左大臣のようなセットが大部分ですが,左遷があるが右遷はありません。頼りになる相棒という意味での右腕はあるが,左腕とはいいません。左右が不揃いなことの背景には、ある価値尺度があることは了解されているでしょう。
 上下についてはどうでしょう。上流,下流,上等,下等,上位,下位、上品,下品とセットになっています。上司,下司という言葉はありますが,対とは見えなくなっています。上昇,下降となるとすっかり相手の漢字を代えてしまっています。上意下達となると,一意になります。
 高低についてはどうでしょう。高音,低音,高温,低温,高地,低地、高額,低額、高圧,低圧とセットになっています。高原はありますが,低原はありません。高等はありますが,低等は見かけません。高尚に対しては低俗とかわります。
 大小については? 大皿,小皿,大物,小物,大寒,小寒があります。ところで,大根はありますが,小根は売っていません。大臣と言いますが,小臣には出会いません。大枠と言いますが、小枠は使いません。
 辞書を検索すれば、詳しい分類ができるのでしょうが,そうする暇がないので,このようなざっとしたところで,放り出します。セットになっていないのは,上,高い、大きいことを言いたいという思いだけがある場合のようです。言葉は、普通の状況から違うことを表すために作られます。当たり前のことは言う必要がないのです。

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(2014年04月20日号:No.734)