《できること 補い合って 老い暮らし》

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 包丁さばきをする際に,食材を押さえる手は猫の手にと聞いています。指先が内側に曲がり込むようにして,刃先から逃げるためです。そうしようとするのですが,一方で,食材を動かないように固定することもしなければなりません。しっかり抑えようとすると,指先が外向きになって,猫の手になりません。どっちつかずになって,包丁さばきがボトボトとなって,リズミカルにトントンとはいきません。
 食事作りで,食材を切る役回りを担当しているのですが,手際よくとはいかずに,慣れない手つきで,追いまくられています。献立や調理・味付けは連れ合い任せで,専ら下準備だけをしています。男子厨房に入らずというしつけを受けて育った名残で,料理は全く,手が出ません。手を出さないで居るといった方が正しいかもしれません。その代わりに,買い物,後始末などの周辺の作業をすべて引き受けています。今のところ,そういう作業分担で,協働しています。
 連れ合いが交通事故で左腕が幾分か不自由で,リュウマチで手の指が不自由ということが重なり,力の必要な作業ができないところを補っています。側にいるときはいいのですが,側にいてやれないとき,不自由な手が思い通りに動かないことに苛ついていることがあり,どうにも言いようのない思いを飲み込んでいるしかありません。不在の時は,手を掛けなくていいような食事の準備を,それとなく連れ合いには勧めるようにしています。
 中食というものがあるそうです。外での食事が外食,食材を買ってきて調理するのが内食。出来上がった惣菜を食べるのが中食ということのようです。我が家では,忙しいときには,この中食を利用することがあります。我々は育ち盛りではなく,生きていくだけの食でいいので,偏りのないように気をつければ,中食で間に合うと思っています。この頃は,需要があるようで,中食のバラエティも多様で,助かっています。
 このような暮らしの在り方がいつまで続けられるか分かりませんが,結構楽しんでいますので,長く続くように願っています。

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(2014年05月18日号:No.738)