《コクのある ラーメン一つ 夫婦味》

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 味のこだわりをほとんど持ちあわせていないので実感はできませんが,なんとなく分かる話がありました。中国のラーメンつくりの料理人さんに教えを受けていた日本の若者が,師匠の作った麺とスープはどちらも完成されていない,コクがないと評したときです。食べてから言いなさいと出されたラーメンを味わった若者は,美味しいと感想をもらしました。「どうして?」と不思議そうです。
 師匠の作ったラーメンは,麺とスープが一緒になってはじめて完成された味になるように調理されていたのです。スープはそれだけでは今ひとつ何かが欠けている状態,八分の完成度であり,麺がその不足分である二分を埋めることで完成されました。麺もスープに浸ることでできあがります。
 食通はコクがあるという言い方をします。コクとは何かしらねっとりしたイメージだけでよく分かりませんでしたが,その師匠に言わせれば,要するに素材の味だそうです。だとすれば,麺のないスープ,スープのない麺はいずれも素材が未完成なので美味しくはないはずです。それぞれが補い合ってはじめてラーメンとしての美味しさが生まれます。
 それぞれが完全な状態になると,他を排除します。なぜなら完成されたものに何かを新しく加わえることは,余計なことでありバランスを壊すことになるからです。人についても同じようなことがあります。一人の人間として完成していると錯覚したとき,他人を排除します。結婚しない若者は連れ合いを自分の完成された人生の余計ものと意識しているのかもしれません。
 夫婦関係はお互いをベターハーフと言い,五分をよしとしています。五分と五分が結ばれることで完成された関係にたどり着けるのです。自分一人で生きていけるという思いを持ち始めた人々は,社会という大きなラーメンになじめなくなり,自らの持ち味を発揮する場を失い,コクも褪せていくような気がしています。腹八分が養生の知恵なら,人八分は人生の知恵になります。
 人は他の助けを得て一人前になれます。おんぶに抱っこはいただけないので,八分までは自分でがんばりますので,残りの二分だけは支えてくださいという人たちが社会を作ってきました。そこに他者を受け入れる感謝,他者に関わっていく思いやりの余地があります。
 共白髪まで連れ添う二人では,八分を五分五分として,お互いに甘え,より感謝し,より思いやる至福の家庭を目指すことができます。お互いの秘めているコクを最大限に引き出すよりよい関係がベターの本当の意味でしょう。夫婦ラーメンを味わってみませんか?

(2001年09月02日号:No.74)