《伝えたが 伝わったのか 気に掛かる》

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 講演を引き受けて,考えることがいくつかあります。先ずは,対象者がどういう人かということです。ボランティアの方々,PTAの会員,老人クラブの会員,地域の居住者,団体の職員,講演会を企画する機関によって,聴き手が異なります。それぞれに興味と関心が異なりますので,それなりの脚色が必要になります。講演の内容は同じであっても,表現を聴き手に合わせるようにして,言葉が確実に届くように話す必要があります。
 話す内容は,聴き手にとって新鮮なものが含まれていなければなりません。そんなことは知っているというものばかりでは,講演を聴く意味が無くなります。少なくとも,言われてみればそうだと,気付いてもらうことを一つの目標にしています。一方で,話さないと決めていることもあります。それは,個人的な体験に基づくものです。聞く側にとって,講演する人の体験に類する内容は,それはあなたにしか当てはまらないことと聞くしかありません。聴き手には何の参考にもなりません。
 聴き手と共有していると思われる情報や知恵を話題にして,「そうそう」と頷いてもらえるところから始めます。次に,事例などを提供して,思わない方向に話を展開して見せます。「おや」「あれ」という小さな驚きを感じてもらいます。そこで,驚きのギャップを埋める論理を提供します。「こういう風に見て考えてみては」という新しい視点や考え方を提供すると,「そうなんだ」と納得していただけます。小さな起承転結の形を,繰り返します。聴き手の中に既にあるはずの知恵に,ちょっと追加をしてあげられたら,そう願って話しています。聴き手とかけ離れた新知識を提供しても,自分とは関係が無いと受け取ってもらえないことになり,お互いに無駄な講演になることを怖れます。
 講演の作法として気をつけていることは,時間です。最近依頼される講演では,1時間という時間設定が多くなってきました。日頃1時間30分の話に慣れているので,何となく短く感じますが,それは別にして,講演時間に盛り込む情報の量を加減する必要があります。大まかに話す部分や詳しく話す部分,事例の大小の選択,内容項目の選択などの整理作業が事前に必要です。話が中途半端なものになっては,聴き手に失礼になります。小さくともきちんとまとまった話を提供する義務が講演者には求められます。
 事前の準備と共に,講演中の臨機応変も必要になります。聴き手の反応を見て感じながら,話を縮めたり膨らませたり,割愛したり追加したり,変更をします。想定外のことなので,緊張感がありますが,一方で,窮すれば通ずということに似て,思いがけない話の展開を引き出すことがあります。聴き手は予定通りの話として聞いていますが,話し手の方は予定外の話をしていることになります。聴き手に導かれた話を聴く楽しみが,講演する者に対するご褒美になります。

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(2014年07月06日号:No.745)