家庭の窓
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セアカゴケグモが現れたとか,駆除したという報道が目に留まります。有毒の小型のクモの一種で外来種だそうで,招かざる客が蔓延っているのは,腹立たしいものです。ところで,その名前ですが,英語名で Red-back widow spider 和訳すると「背中の赤いゴケグモ」です。
漢字で書けば「背赤後家蜘蛛」です。後家とはどういうことでしょう? 俗説には「毒性が強いため噛まれた時の死亡率が高く、奥さんが後家になる」ということのようですが,実際には、ゴケグモ類の英名 "widow spider" そのままの和訳で、ゴケグモ類はオスの体がメスに比べて非常に小さく、交尾後にオスがメスに共食いされることに由来するものだということです。
実は今まで,セアカゴケグモについて,何となくという程度の関わりでした。どういうことかというと,背中の赤い蜘蛛であり,ゴケというのは何の理由も無くただ音につられて苔?と思い込んでいました。考えると何のつながりもない,おかしいことですが,その一考もしていなかったのです。その言い訳としては,目に飛び込んでくるカタカナ表記が音の意味を薄めてしまったことがあります。
もしも,カタカナ表記ではなく漢字表記であれば,思い違いをすることはなかったことでしょう。何故「後家」という名詞が名前についているのか,不似合いな感じが疑問をもたらして,習性にまで意味を辿ることができたはずです。表音文字と表意文字との情報量の違いです。
人の名前についてはどうでしょう。ジョージに対して,譲二,丈治,丈志,丞次,穣治,條司,城二,・・・と多様です。面倒ですが,それぞれに意味を感じ取ることができます。ただ,その意味と名前の人とのつながりは,さほど確かではないようです。いわゆる名前負けというようなことが起こります。
外国語を音のままにカタカナ表記する手抜きをせずに,意味を重視して翻訳語として漢字表記をした明治期の人は,言葉に対する期待が強かったことになります。そのことを思い起こすと,蜘蛛の英語名を意訳して漢字表記し,それをわざわざカタカナ表記にしてしまった意図は,一体何処にあるのでしょう。外来種であるということからカタカナ表記にしたというつもりかもしれません。確かに,漢字表記をすると,在来種と勘違いされるかもしれませんし,また,多少艶めいた感じを醸すことにもなってしまいそうです。
最近の子どもの名前を入学式や卒業式の名簿で眺めていると,漢字を音標として用いているように感じます。何か違うなと思いますが,当の子どもが背負っていくことになるものが良いものであることを祈るばかりです。
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