《本当の 知恵を引き出す よい例え》

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 二つの組織が相携えて動いていく様を例えて,車の両輪と表現することがあります。この表現をどのようにイメージしているのかで,理解に違いが現れます。平行に並ぶ車の軸が単につながっているだけで,車の回転が車軸とは連結していないといったイメージであれば,両輪の回転が一致しなければ,真っ直ぐに進むことはできません。そこで,車輪が車軸に固定されているイメージであれば,真っ直ぐに進みます。
 車の両輪というときの車を荷車や自動車としてイメージすると,車輪は左右に平行に位置します。ところで,車には身近な自転車もあります。車輪は前後に位置して,車軸は別々です。縦に並んだ両輪というイメージも可能です。自転車のように後輪に駆動力が掛かる形であれば,前輪は後輪のなすがままに回転せざるを得ません。そのような形の組織の連携があるかもしれません。もちろん,前輪には舵取りというもう一つの重要な機能が委託されているにしても,駆動の決定をはじめ全般は依存することになります。
 おそらく話す方のイメージは,車軸がつながった平行に向き合っている両輪でしょう。聴き手にとっては,その話し手の意図を一応受け入れますが,違ったイメージを描きたくなることもあるでしょう。車軸の回転を切り離してみたり,縦並びの両輪にチェンジしたりして,楽をしたいという逃げの心に惑わされます。縦並びでは,動いていないと倒れますので,辛いことになりそうです。
 何かの会合でのあいさつで車の両輪といわれると,聞く耳をさておいて,どんな両輪でありたいかとあれやこれやと思考錯誤を楽しみます。いろいろなバリエーションが想定できるとしても,それを表立たせることはありません。あくまでも,思考の遊びであり,具体的な方策の検討作業になります。車の両輪という状況を実現するためには,車軸に固定することが必至であるといった抑えておくべき要件が見えてきて,実際的な対応について配慮することができます。
 活動を共通理解する縁として,具体的は構造物の機能を例えとすることがあります。あくまでも例えですから,完全に一致するのではありませんが,ある程度の対応は可能です。例えである構造物の機能を理解することで,本筋の活動の具体的な実践課題が推察されます。
 例えとは,思考の補助線の役割を持ちます。適格な例えを持ち出せるかどうか,その力が説明の良否を左右します。本当に伝えたいことは,単なる見た目の形ではなく,例えが発揮している機能の形なのです。

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(2015年02月15日号:No.777)