《仕合わせは 人の振り見て 我が振りを》

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 ある講演のレジメを目にすることがありました。地域で活動する組織に関するもののようでした。講演の要点が箇条書きになっていました。その一部は次のようなものでした。

 ○チームの浮沈の要因:「人財,人材,人在,人罪」の4つ
 ○共働:ストーリーづくり:共有→共感→共働→共創の起承転結で
 ○組織の空洞化,限界集落化

 最初の要因については,人という字が連なっていることで,要は人が大事であると言っているのでしょう。4つの内で後ろの2つは,ワープロで変換してくれませんので,講師の造語かもしれません。わざわざ言葉を作ってまで,人の字続きにするのは,印象的であることを意図していると思われます。講演をする際には,並びを作ることで,話の内容の整理をしたくなるものです。
 ただ気をつけないと,形を整えることによる無理が生じて,内容の広がりを邪魔することがあります。この例では,人以外の要因が論外に置かれることになります。聞いている方は,きれいに整理されていると受け止めますが,実のところ,ごく一部を論じているだけで,全体が見えなくなっていることに,後で気がつくことになります。
 2番目の共働に関する指針の提案も,共の字づくしで整理されており,同じことが言えます。ここでは,起承転結というストーリー構成が対応的に位置づけされることによって,共有から共創の4つが一義的に連結しているように整理されています。巧みな配置であることに満足すると,多次元的視点を失念する恐れがあります。
 講演という限られた時間にまとまった内容を伝える所作では,講師も聴講者も,限られた内容であることを了解しているはずです。ただ,時に,その了解をしていない方々がいると,不満が語られることになります。その声を封じるためには,きれいにまとまった話しぶりが有効になるのです。分かりやすかった,という感想を引き出すのです。
 3番目の2つの○○化の併置は,違った局面での同様な事象を表す言葉を重ねることで,それぞれの言葉が持っている連想世界をつなぎ合わせることで,事象の理解が豊かになるという目論見です。組織の空洞化を限界集落化に関する目線で見ることもできますというわけです。違った目線で見ることで,理解の広がりが期待できるのです。これも,講演の定番です。ただ,局面が違うので,すべて同じように考えてしまうと,間違ってしまいます。違いは違いとして,きっちりと抑えておく注意が必要です。物事を切り分ける理という刃は,使いようを気をつけないと,危険です。
 他の人の講演の展開をのぞいてみると,自分の手法との比較ができて,いろいろな気付きがあり,とても参考になります。陰ながら学ばせて頂きました。

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(2015年10月18日号:No.812)