《仕合わせは 言葉の流れ 親しんで》

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 話す,聞く,読む,書く。人がこの言葉の能力を獲得する順序は,聞く,話す,読む,書くでしょう。幼児は親の声を耳にして,口まねをします。音の並びに意味があるということをどのように理解できるのか,すごいことです。聞く,話す,という日常的な繰り返しはあっという間に,言葉の交換を可能にします。この間,親は子どもの発声のずれを根気よく修正してみせます。0から始めた言葉の習得は,わずかに1歳を過ぎる頃には端緒についていきます。
 絵本の読み聞かせによって,絵と結びついている聞く言葉,話す言葉が,文字という記号につながっていることを覚えます。音声が50音から構成されていると学べば,音の一つ一つに文字を対応して覚えるのはあっという間に終わります。漢字にたどり着くのは,かなりの努力が必要ですが,日常的には,数年で習得しています。
 日常の暮らしは,単語としての言語で過ごすことのできる世界です。かつての親父は,飯,風呂,寝る,の言葉で一日を過ごしていました。社会生活では,文章としての言語のつながりが求められます。主語述語を基本として,修飾,形容などの具体性をもたらす構成が必須になります。そこで,人としての言語能力は,文章を聞く,文章を話す,文章を読む,文章を書く,というものになります。
 作文が苦手という子どもが多いというのは,大人にも思い当たることです。何をどう書いたらいいのか分からない,そういう問が浮かんできます。その問に対する答えは,まず文章を聞き慣れる,文章を話慣れる,文章を読み慣れる,その3つの慣れが完成したら,文章を書くことができます。
 食事の際に,「おいしい」という言葉しか浮かばないとしたら,文章を書くことは不可能です。例えば,「私の口に入ってきた肉は,ほどよい焼き具合によって肉汁が豊かで,ソースとの絡み具合がとてもまろやかである」と,拙いながらも状況を文章の形で話そうと努力をすべきです。普段の言語生活に文章がなければ,文章を書くことなどできようはずがありません。すなわち,聞く,話す,読む,書くという言語能力は,一連に繋がった一体ということです。
 文章? それは定型に従うことから始まります。いわゆる5W1H,誰が,どこで,いつ,何を,なぜ,どのように,の要素に答えていけばいいのです。主語を,「私は」とするか,「彼は」とするか,「吾輩という猫は」とするか,文章は多様な状況を生み出していきます。どの設定を選ぶか,それは物事を表現しようという意図に依ります。その選択をする局面に向かうとき,人は物事の細部に関わっていく自分を見つけます。文章を発案することは自分の心を表現することになるので,文は人なりといわれています。

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(2015年11月29日号:No.818)