《安らぎは 育ちの良さを 見届けて》

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 ネットのニュースを見ていたら,「育ちが悪い」という言葉が目に入りました。今どきの情報の中に,育ちという言葉が紛れ込んだ違和感があったからです。氏より育ちといわれていた育ちを意識することが未だに残っていることに,少なからず驚きました。
 記事は,以下のようなものでした。

 日頃の言動は小さなころからのしつけの積み重ね。そう考えてみると眉をひそめてしまうような言動が平気でできる人は「育ちが悪いのかも」思ってしまいますよね。では,どんな言動から育ちの悪さを感じてしまうのでしょうか。女性が男性を見て育ちが悪いと思う瞬間について聞いてみました。
 ●食事マナーが身についていない
  ・くちゃくちゃ音を立てて食べる人
  ・箸の使い方など
 ●言葉遣いが乱暴
  ・言葉が汚い
  ・女の子のことをお前と呼ぶ
 ●人に対して横柄
  ・あいさつができない
  ・粗暴で上から目線
  ・何でも文句やけちを

 育ちが悪そうに思わせてしまう言動は,自分が気付いていないことも多く,大人になってしまうと直せないようで,子どものころのしつけを受けていないと思われるとコメントされていました。
 大人としての言動ができないのは子どものままということですが,それが子どもの時のしつけを受けていないという論理は,とても面白いと思います。子どもの時に大人になるためのしつけを受けるということは,子どもの中に大人を注入するということです。育ちというプロセスをベースに考えるとごく当たり前のことではあるのですが,子どもは子どものままではいけないということをことさらに意識すると,育ちという概念の不思議さを感じます。
 それでは,子どもの育ちが悪いということの責任は誰が担っているのでしょう。親ということになるのでしょうか。家族の食事時が,育ちの現場になります。箸の使い方は子どもが使い始めたときに親が直接に指導することです。今の若い親に箸の使い方をしつけなければという意識があるでしょうか。美しく食べるという美意識があるようには思われません。マナーといったことになんとなく面倒なものという思いを持っているようです。
 育ちが悪いという言葉がまだ生きていることは救いですが,しかし,育ちという概念から大人になるしつけが抜け落ちて,塾やクラブでの特別な能力の育成に偏っている現状では,改善は期待できそうもありません。人としての姿勢が備わっていないことが諸外国との比較で指摘されることがありますが,そこに育ちが関わっていることを勘案するとき,子どもの育て方を間違っていたのではないかという反省が必要になります。
 育ちが悪いと言われたとき,時間を逆回しできませんし,リセットもできませんので,取り返しがつかないことです。育ちの恐ろしさを伝えたいと思います。

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(2016年05月22日号:No.843)