家庭の窓
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ある芸能人がしでかした女性に対する破廉恥行為について,弁護士によるコメントがありました。「違法性の顕著な悪質な事件ではなかった」。違法性にも軽重があるということであり,強姦致傷という行為は違法性が軽いというのでしょう。確かに,刑事事件としての罰則には軽重があり,裁判で争われる内容もその線引きです。アナログな判断の世界になっています。
ところが,被害を受けた当事者にとっては,違法性の有無というディジタルな判断が重要になります。良いか悪いかの二者択一なのです。どの程度の悪さかということを想定することはしません。悪いことは悪い,それだけです。悪いことにもいろいろあるという現実の中では,罰則による社会的な対応に軽重を設けざるを得ません。それが,古来からの原則,目には目を歯には歯を,ということになります。
被害を受けた者が願う報復があります。それが罰則と一致することはないでしょう。倍返しをしたいという感情になることが普通かもしれません。そのミスマッチをどのように埋めていけばいいのでしょう。おおかたは,時の流れで生まれる冷静さが感情の高ぶりと入れ替わっていくことになるようです。そうでなければならないということではなく,そうするしかないというあきらめです。
心の傷,トラウマを抱えて,それが癒えることはありません。もちろん,無かったことにすることもできません。その負の気持ちを消すことはできないでしょうが,たくさんの正の気持ちを抱えていくことはできるはずです。そうすることが生きていくつらさであり,生きている喜びにもなるのではないでしょうか。そのためには,閉じこもろうとする気持ちに気付いて,それでも周りの人とのつながりを築こうという意欲を持ち続けていくことです。人を信じようとしないと,生きていけないからです。
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