家庭の窓
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講演や挨拶の中で生き抜き的な話題として,クスッと笑えるネタを使うことがあります。自分で創作するほどの才はないので,サラリーマン川柳を引用させてもらっています。新聞に報道されていた「今年のサラリーマン川柳ベスト10」を眺めてみると,名前に関する句が多いのに驚きます。一部転載しますと,
2位 「久しぶり! 聞くに聞けない 君の名は」
3位 「ありのまま スッピン見せたら 君の名は?」
4位 「同窓会 みんなニコニコ 名前出ず」
6位 「君の名は ゆとり世代の 名が読めず」
2位と4位の句は,名前を忘れてしまった,思い出せないという状況で,「あるある」という共感を得ています。3位の句は,お化粧した顔とのお付き合いなので,化けの皮が剥がれた顔には知っている人の面影がなくて,見違えてしまうという冗談交じりの経験が共有されています。6位の句は,学校の入学式や卒業式に招かれていただく名簿を見ると,何と読むのか分からない名前が大半になっているので,皆同じ感じを持っているが分かります。読めても,名前らしくないと感じたりします。
10位に入っている「職場でも 家でもおれは ペコ太郎」という句も,名前に関する句です。愛称や役職名で付き合っていると,うっかりして名前が出て来なくなります。人間関係は人と人の付き合いですが,その要はお互いの名前を呼び合うことです。名を忘れると,名前も知らない間柄,見ず知らずの人という距離に遠ざけてしまうようで,後ろめたい気持ちが湧いてきます。だからといって,お名前は?と尋ねると,初対面の関係に戻す失礼さを露呈します。
一方で,親との付き合いでは,あまり名前は使われません。磯野カツオが父親を「波平」とは呼びません。「お父さん」です。母親も「フネ」ではなく「お母さん」です。親から子どもに向かっては,波平父親は「カツオ」と呼び捨てです。孫は「たらチャン」とチャン付けです。ところで,夫婦の間となると,名前でしょうか?
名前は,書くのは自分ですが,呼んだり読んだりするのは他人です。読めない名前というのは,読ませないという意図ではないのでしょうが,ちょっと不親切です。珍しい読み方ということで覚えてもらうことを狙っているのであれば,いささか手前勝手に感じる人もいるかもしれません。名前は親が勝手につけて,自分で決めることはできないので,あきらめるしかありません。ただ,名に恥じない生き方ができたらいいということは,全ての名前に言えることです。
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