《安らぎは 音の流れに 身を任せ》

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 耳の中に,シンフォニーの豊かな音が押し寄せてきます。ネットを通じて聞いている音楽番組。頭の中で音楽が踊って,キーボードに向かうべき手が,指揮者よろしく宙を舞ってしまいます。若い頃には想像できなかったことが,今はいとも簡単に,普通に楽しむことができることを,不思議な感覚で味わっています。ブラームスの交響曲第1番の迫っては引いていく音の揺らぎにすっかり身を任せています。
 しなければならない企画立案の作業があるのに,今ひとつのめり込めないでいる気持ちの隙間に,音色豊かな世界を滑り込ませてしまいました。ライブ録音の放送なので,楽章の切れ間に会場のざわめきが伝わってきます。目を閉じてしまうと,舞台いっぱいに広がっているオーケストラが浮かんでくるようです。指揮者のサバリッシュが振り上げたタクトが一瞬の静止の後静かに動き始めて,再び音の世界が幕開きます。
 ブラームスという作曲家が20年を費やして紡ぎ出した調べをどのように聞き取ればいいのか分かりません。ただ調べを受け止めているだけです。曲に乗せて気持ちを流れるままにしているだけです。主旋律に反応していく身体を感じ,導かれていく世界を楽しんでいます。楽器の出入りや音の強弱,音楽的な名称は知りません。音楽に沿って揺らいでいる気分が心地よい,それで十分です。食の素材のあれこれは知らなくても美味しく食べることができる,音楽に浸る,それだけでいいのです。
 交響曲はやがて終わります。気分が高揚していきます。フィナーレに向けて,静かにしっかりと,激しく湧き上がり,高揚した時が刻まれていきます。演奏者が感じている曲の流れに共鳴していくことで,感動という快感を共有しようとする営み,それを導く音の精緻な流れを企画したのが作曲者です。目を閉じて身を委ねておきます。

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(2017年06月04日号:No.897)