《優しさは 求めず人に あげるもの》

 気まずい思いをすることがあります。初対面の人と同席しちょっと話した後の帰り道,出口で「それではお疲れさま」と別れの挨拶をされたときです。左右に分かれるのであればその場は収まりますが,同じ方角の時は一瞬立ち止まってしまいます。仕方なしにちょっと後ろからついていく羽目になります。思いもしない状況に遭遇したときわずかな間が空きますが,それがどうにも間の抜けた仕儀になります。
 家庭では連れ合いが主導権を握っていますが,ときどき気持ちのすれ違いが起こります。そろそろ風呂に入ろうかと思ったとき,「早く」という号令がかかります。タイミングはドンピシャリですが,その言い方にぐずぐずしないでという響きがあります。「いま入ろうと思っていたところ」と答えても詮無いこととあきらめて風呂に向かいます。言われてしているような間の悪さがあります。
 立場が逆になって相手に気まずい思いをさせていることがあるはずですが,それは気づけません。なぜなら,状況は何の支障もなく進んでいると思っているからです。マイペースの落とし穴は,そこにあります。人との関係がうまくいっていると自覚しているときは要注意です。相手の事情を見誤っているかもしれないという気配りが肝心です。相手の意向を確認する会話からはじめるようにしたらいいでしょう。
 若者の語尾上がりや「〜じゃないですか」という話し方は,聞き手に問いかける形です。自分の意思を直接ぶつけるのではなく,相手の受け方を確かめています。自己主張につきまとう気持ちの摩擦を避けようとしています。人間関係の痛みに敏感になっているようです。したたかな大人の目にはひ弱に見えて,世間の風は冷たいのだからそれでは生きていけないと心配しています。人には優しく自分は強くあればいいのですが。
 
ホームページに戻ります Welcome to Bear's Home-Page (2000年06月04日号:No.9) 前号のコラムはこちらです 次号のコラムはこちらです