家庭の窓
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若い世代と年配の世代で,言葉が違うことがあります。よく引き合いに出されることが,「情けは人のためならず」という言葉の理解です。若い世代は,情けを掛けると,その人が甘えるようになるので,その人のためにならないと,情けをよくないものと考えています。年配の人の解釈,それは本来の意味ですが,情けを掛けると,その情けは人から人へと巡っていき,いつの日か自分に情けが戻ってくるとして,情けをよいものと勧めているのです。
言葉の変化として,世代の違いが出てくる例が,新聞のコラムに出ていました。かなり前から言われていたことですが,クレヨンのセットの中で,年配者には見慣れない名前の色が入っています。うすだいだい,あるいはペールオレンジと表記されています。年配者には「肌色」でした。
人種や個人によって肌の色はさまざまであるという指摘で,2000年以降,メーカーが名称を改めていったそうです。一方で,イタリアの文具メーカーからは世界中の子どもたちの肌を参考にした12色の肌色セットが販売され注目されているということです。
肌色という表現を特定の色として使わないようにすると,肌色という言葉が消えていきます。そうではなくて,肌色という色の種類として多様性を持たせると,生き残ることができます。肌色は人それぞれという考え方をする方が,気持ちが豊かになります。嫌なものは蓋をして消してしまうというのでは,窮屈になるだけです。
何か不都合が指摘されると何の工夫も反省もなく単純に廃棄してしまうのではなく,考えて知恵を出して改良,改善すればいいのです。使い捨ての文化と,使い回しをする文化,どちらが気持ちの豊かな世の中を作り出すのか明らかです。
言葉は使われる世界が広がっていくと意味のずれが起こります。その誤解が現れたら,そのことをお互いが理解して,意味を多様化していけばいいのです。分かり合おうという意志が働けば,言葉は新しい意味を獲得して豊かな表現ができるようになります。
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