《安らぎは 命の香り 触れあって》

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 「香害」という言葉が浸透しつつある。香水や柔軟剤などの香りが,周囲に不快感を与えたり,場合によってはアレルギー反応を誘発させたりして,健康被害を及ぼすことを指す。「公害」にちなんでそう呼ばれるようになったという。(西日本新聞:平成29年10月6日)

 本稿を書くために「こうがい」を漢字変換させると,公害が一番に,その他郊外などが出てきて,最後に香害と出てきました。変換候補として世間的に想定されているようです。ただ,香害という言い方は落ち着かない気分になります。香気(鼻に感じるいい匂い),臭気(いやな匂い)という言葉があることを思い出すと,香害よりも臭害の方が落ち着きます。公害という言葉との連想を利用する意図は分かりますが,安易さがあります。
 よかれと利用されている香水,柔軟剤の香り,その香りが害になるという表現としての筋道もあります。しかし,それらの香りは人工香料です。人が勝手に作り出した偽りの香りです。その偽りである部分が,生きている人には害となるのはあり得ることです。芳香剤に含まれる香料成分がアレルギー反応を引き起こすのも,自然の香りではないからです。
 香の物という食べ物があります。自然にあるかすかな香り,決して香りといって押しつけてこない慎ましさを,そっと感じ取る感覚を慈しむことが,生きるために食を楽しむことです。香りをいい匂いと感じるのは,生きていることから醸し出される香りだから共感できるのです。いい匂いだろうとまき散らされる人工の香りは,いい匂いと感じさせようとする無作法さがあります。それが繊細な感性から拒否されるのです。
 「こうがい」には「光害」という言葉もありました。この光も,太陽や月の自然光,生きている営みの光とは違う,人工的な光の無作法な押しつけが生きていく上での害になります。そういう点では公害という大きな言葉の範疇に入ります。人工物によって作られている環境に対して,生きている人は自然な存在であるというミスマッチは,心身の健康という面でひずみを生じています。人に優しい,その言葉をまっすぐに心に留めておきたいものです。

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(2017年10月08日号:No.915)