《喜びは 気持ちを開く 言葉得て》

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 反応することが生きていることの証拠のようです。眠っている人が生きているかどうか,つついてみて反応するかどうかで確かめませんか。様々な刺激に対して何の反応もしなくなると,どういう気持ちになるのか分かりません。余計なことを考えなくて済むので,気楽かもしれません。
 「名もなき家事」という言葉が飛び込んできました。紙面を眺めるというささやかな探索行動の折に,何か引っかかるものを感じたのか,意識に浮き上がってきました。その意味することが説明されています。家事といえば料理,掃除,洗濯,買い物などが想定されます。しかし,家の中には他にもすべきことがたくさんあるのです。トイレットペーパーの補充,シャンプーの詰め替え,ティッシュの箱の交換,脱ぎっぱなしの服の片付け,脱いだ靴の整理,郵便物や新聞の受け取り,貯まった新聞紙や雑誌の片付け,カレンダーの月替え,ファックス用紙の補充,鉢植えの水やり,・・・。誰かがやらなければ家庭生活が成り立ちません。多くの男性がこの名もなき家事を労働と認識していないことが,問題のようです。
 気になったことは,「名もなき家事」という言葉によって,無視されていた行動を家事労働であると認定することができたということです。認定されないと存在しないことになるのが普通です。無戸籍の人がいるということですが,生きているのに存在していると認定されていません。意識の世界は言葉の世界であり,言葉による表現がないものは,意識されません。セクハラという言葉が生まれたから,意識されて抑制が可能になりました。優しいねという言葉があるから,人は優しくなることができます。
 ヒヤリハットという言葉があります。何かしら危ないことが起こったが,幸い事故や災害には至らなかった事象のことです。 ハインリッヒの法則(1:29:300,分析により導かれた労働災害の発生比率)では,1 件の重大事故のウラに,29件の軽い事故,300件の無事故(ヒヤリハット)があると言われています。小さな危険を意識することで,大きな危険に対する備えをするチャンスになります。無自覚のままでは,危険を招くことになります。言葉を知っていると,安全を手に入れることができます。
 この効用を転用することが行われています。「ニヤリホット」です。ヒヤリハットで行動にブレーキをかけようという向きを,ニヤリホットでは行動にアクセルを踏もうという向きを持たせています。人と係わる場面で,気まずくなったり,衝突しかねないヒヤリハットに気をつけるだけでは疲れてしまいます。そこで逆に,ニヤリホットする場面に着目して,そういう関わりを増やしていこうということです。気持ちがのびのびしていきます。気持ちのよくなる言葉を共有したいですね。

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(2018年07月22号:No.956)