《喜びは 己と世界 限らせて》

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 会員企業への福利厚生事業を行う一般財団法人の会員IDがフリーマーケットアプリで売買されていた,という記事が目にとまりました。IDさえあれば3割引となる娯楽施設の入場券が,コンビニで何枚でも何度でも発券できるそうです。誰でも利用できるため,転売されたり,インターネットで拡散したりすれば,施設に与える損失は予測がつきません。フリーマーケットに出品したのは会員企業の関係者のようだということです。
 ちょっとしたいたずら程度のつもりでしょうが,ネット世界の情報の増幅率は人の想定を遙かに凌いでいて桁が違います。自分のしたことの深刻な結果を,少し考えてみれば分かったのではと言われます。その考えるという行為をどう積み上げるかが提示されなければ,ことは解決しません。考え方を考えることを勧めても,埒が明きません。あるお得な情報を100人の人が受け取って,それぞれ100人に伝えると,10000人が利用します。もし1000円お得な情報であれば,1000万円の損失を施設に与えることになります。現実はさらにさまざまな要素のかけ算が重なっていくので,それ以上の大きさになるでしょう。
 人が口で語る話であれば,人の記憶が薄れていくという終息が期待されます。しかし,ネットに書き込まれた情報は薄れるということはなく,永遠に明瞭なままで記憶されています。さらに,訂正し消去することは不可能でもあります。取り返しがつかない魔の空間なのです。情報が薄れないというメリットは,戻せないというデメリットにもなります。いい加減に話しても,いい加減に聞いてくれて,いい加減に消えていく,いい加減な会話世界に馴染んだまま,ネット空間の情報を扱うと,いろんな不都合な事態が跳ね返ってきます。
 人の想定能力に合わせた技術は,過去のものです。自転車や自動車程度の技術であれば,なんとか乗りこなすことができますが,ジェット機やロケットになると人の操作だけでは制御不能です。下手に人が扱うと,暴走します。技術の発達が身近にあるからと,安易に関わっていると思わない結果も起こることがあります。振り込め詐欺に引きずり込まれる高齢者の方は,金融世界の便利なシステムの陰に在る危うさを想定することができていません。悪意が入り込めない世界ではないのです。
 自然界だけではなく,人間世界においても,何が起こるか分からない,当たるも八卦当たらぬも八卦という,五分の世界に賭けている覚悟と慎重さを発揮していきたいものです。

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(2019年03月10号:No.989)