家庭の窓
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言葉を覚えることは心の食事です。どのような種類の言葉を覚えて使うか,それが心の活動になり,人としての品格を表します。人権宣言において,人は理性を持つと謳われていますが,それは言葉を獲得したことから得られたものです。
難聴児の娘さんがいる父親が地元紙に寄稿している言葉のかけはしというコラムを目にしました。お出かけをするのは遊びの他にもう一つの意味があるというのです。聞こえと言葉の絶好の練習になるという示唆です。こういう話しかけが示されていました。トウモロコシ狩りの折りに,「おおきいのをえらぶよ。つけねをひねって,もぐよ。なまでたべられるんだって! かわをはいで。ガジッて,かぶりついて。あまい! おいしいね!」。そして,動作と一緒に言葉が入ってくるので分かりやすいし,楽しい体験は忘れません。この体験が言葉を作ると説明されていました。
スマホに,幼児期の先取り教育は逆効果だった…「小学校4年生で成績は逆転する」衝撃の研究結果と本当に必要な早期教育,という記事が飛び込んできました。内容は,幼児期の先取り教育は子供の能力を伸ばせず、むしろ小学4年生の成績が逆転する可能性があると研究で明らかになった。早期教育のデメリットは特に社会的・感情的な発達の領域に表れ、遊び中心の保育では読み書きの力は変わらないものの、より多くの語彙力が身につく,というものでした。さらに,決められた時間に先取り準備教育を行う「一斉保育型」と、遊びの時間を多く取る「自由保育型」の幼稚園や保育園の園児たちを対象に、読み書きの力や語彙力にどのような差があるかを調査した結果、どちらの保育型でも読み書きの力に差はないものの、語彙力については「自由保育型」の園児たちの得点が高いという結果になりました。しかも、その差は3歳よりも4歳、4歳よりも5歳と、年齢が上がるほど開いていったのです。この研究チームでは、自由保育型の幼稚園での、子供たちの「知りたい」「やってみたい」という気持ちからくる能動的な行動や机上ではなく直接触れて感じた体験、遊びを通した試行錯誤の回数、お友だちとの言葉のやりとりなどが、より多くの語彙を脳に植え付けたのではないかと見ているというのです。
→ https://news.nifty.com/article/magazine/12179-3653185/
現代人は生まれる前から言葉が存在しているという状況にあるために,言葉についていこうとする形を強いられます。しかし,言葉は人の体験を記憶し伝える道具として生まれたものです。そこで,生まれて初めての体験をしたあれこれを,どのように記憶するかという名札として言葉を使っていくことが出会いとして正しいことになります。恋をしたから恋という言葉がきちんと記憶され間違いなく使えるのです。
2020年に福岡市の大型商業施設で買い物客の21歳の女性が面識のない15歳の少年に刺殺されるという事件がありました。被害者の母親が心情等伝達制度を利用して「私の話に向き合って謝罪の意味を答えて欲しい」との呼びかけをしたところ,19歳になっている少年は「ごめんですね」と返答したそうです。少年の反応には反省や謝罪の気持ちは一切感じられなかったと報道されていました。
立場が違う,逆になると,言葉は通じないのは当然です。体験していないことは,言葉で引き出される情報を持ち合わせていないので,認知不能なのです。せいぜい似たような体験を引き出してみることができるかもしれませんが,それをしようとしないのは,分かろうという言葉への敬意を持ち合わせていないことになります。言葉を門前払いする気質を育んだしまった生い立ちを怖れます。
同じ環境,同じ世代など,経験を同じくする人の間では,言葉は伝わり合うものです。逆に,世代が違うと言っていることが分からない,誰もが体験しているはずです。
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