家庭の窓
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地域の公民館で人権学習が開催され,参加してきました。今年は,無意識の差別というテーマでした。なんとなく耳にしてはいましたが,じっくりと付き合ったことのないカタカナ語に出会いました。よい機会なので,少し調べてみます。
まずは,マイクロアグレッションです。マイクロアグレッションは,小さい単位を表す「micro(マイクロ)」と,他者への攻撃という意味の「aggression(アグレッション)」を組み合わせた言葉で,小さな攻撃性を意味します。言い換えると,他人を傷つける意図はありませんが,偏見や思い込みや,決めつけによる発言や行動をして,結果として傷つけてしまうようなことを指します。
マイクロアグレッションと差別はよく混同されますが,両者は少し違います。差別は明らかな敵意や偏見に基づく行動であり,その意図は通常明らかです。一方で,マイクロアグレッションは多くの場合,加害者が意図していない形で発生します。言い換えると,差別は「意図的に傷つける行動」であり,マイクロアグレッションは「無意識のうちに傷つける行動」です。一般的な誤解として「意図がなければ問題ない」と思われがちですが,重要なのは「受け取る側の感じ方」なのです。
次は,アンコンシャスバイアスです。アンコンシャス・バイアスとは,心理学の概念である「認知バイアス」の一つで,無意識の偏見や思い込みから偏ったモノの見方をしてしまうことです。「無意識バイアス」「潜在的ステレオタイプ」とも呼ばれます。その代表的なパターンとしては以下の五つが挙げられます。
○ステレオタイプ:性別や国籍などの属性に対する先入観・固定概念に
縛られてしまうこと
○正常性バイアス:何か問題が発生した際に,先入観などに基づき,
「正常の範囲内だろう」と被害の可能性を最小化して
認識すること
○確証バイアス:自分の偏見や思い込みを強化する情報ばかりに意識が
集中し,認識に偏りが発生すること
○権威バイアス:権威がある人や,専門家の言動は正しいと自動的に
信じ込んでしまうこと
○集団同調性バイアス:集団の中にいると無意識的に他人と同じ行動を
とってしまうこと
さらに,認知の偏りとなる効果などが重なることもあります。
ハロー効果:ある対象を評価する際,わかりやすい印象や特徴に意識が引っぱられ,正当な評価ができなくなること
慈悲的性差別:女性やマイノリティに対する好意的な思い込みにより,無意識的な性差別をおこなってしまうこと
この「無意識」というものがアンコンシャス・バイアスの特徴であり,それ自体は良い悪いといった判断をされるべきものではありません。
しかし,アンコンシャス・バイアスに起因する発言や行動によって,第三者に不快な感情を与えたり,傷つけたりする事象が発生しています。
人との関係を持とうとする場合,相手の人となりが不明では,対応できません。まずは,目で見える情報から判断するしかありません。その判断をする基本的な形は,分けていくことです。分類をするのです。その手段が言葉です。性別による男性か女性か,年齢による子どもか,成人か,年寄りか,といった大まかな類別をします。さらには表情などから,優しそうな人とか,怖い人といった判定に至ります。要は様々な分類を重ねていくことで,自分との関係を持つべき相手であるか否か,相性といった判断をする必要があるからです。
さらに,区分けによる判断には,それぞれに属性が付与されています。男性は力強くたくましく,女性はか弱く優しくといった特徴のラベルです。これが画一的な思い込みとなります。ただし,この属性は第一義的なものであり,さらに細密な分類により多様な実像が明らかになっていく過程が付随すべきなのです。だんだんに真性な姿の認識に進んでいくものであるとはいえ,実際的には決して終わりはないでしょう。したがって,一瞥で丸わかりするはずはないという曖昧な状況判断しかできないという限度を自覚しておかなければなりません。
自らの他者の理解が不完全であることを弁えておけば,それを直接に他者に伝えることは無責任であり無作法となります。あくまで自分の中に納めておくべき未完成なイメージは開示するのは危険なのです。間合いを見極めて,確かめる情報の交換を繰り返しつつ,相互理解を進める余裕が求められます。
いわゆる常識的な思い込みだけに従った間合いでは,働きかけられる言動は,受ける側にとっては多少的外れな部分もあるはずであり,お互いがそのことを認識し許容しあうことが必要になります。いわゆる,人間関係における礼儀作法という遠慮と尊重の形に従うことの意味が,再評価されるべきです。
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