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【言葉に込める思い?】
空港の滑走路を見ると,何かしら順不同に思える番号がついています。その意味は何でしょうか? 滑走路が延びている方角を示しています。北の方角を基線として時計回りに測った角度を10度単位で表しています。滑走路が真東向きなら09という数字が滑走路の先端に表示されています。真南向きの滑走路は18,真西向きなら27,真北向きは0ではなく36となっています。
硬貨には製造年が記されています。何年の製造であっても,額面通りに通用します。消費期限があるとも思われません。回っている間にすり減ったら破棄されるのでしょうが,製造年に依るわけでもありません。硬貨は金,銀,銅,錫,アルミなどの合金です。各金属の値段は相場で変動するので,製造コストに響きます。コストを押さえるという営為が絡むために,毎年金属の含有比率が変化することになります。そのことを明らかにできるように製造年が表記されているそうです。お札にも製造年があるそうですが,国家秘密になっているということです。
順序といえば,音階の順は,番号で表記することもあるようですが,普通は「ドレミファソラシド」です。これは一体何なのでしょう。音階に名前がないと不便です。11世紀のイタリアで,グイード・ダレッツォという修道僧が,「聖ヨハネ讃歌」という曲の音階が一音ずつ高くなっていることに気付いて,各音節の頭文字をとって,「ウレミファソラサ」と音階名を表記したそうです。その後発音しやすいように今の形になりました。
箇条書きをするとき,番号のほかに,アイウエオ・・・を使うことがあります。以前はイロハの順でした。イロハは「色は匂えど散りぬるを・・・」という歌にちなんでいます。かつて学校で「いろは」で仮名を教えていましたが,この歌は無常を表す宗教観が背景にあるということで,親に忌避され,あいおうえおに改められたことがあるそうです。いろは・・・は消えていきました。この伝で行けば,ドレミも宗教がらみなので忌避されるべきですが,どうなのでしょう?
数字は自然的であり,誰にも受け入れられやすいのですが,言葉は人の思いを引きずってくるので,やっかいです。障害者という言葉を使うとき,害という字が悪いイメージであることから,障がい者と表記することがあります。子どもたちの間で障害を持つ子どもに対して「ガイシャ」という言葉が密かに使われていることを伺わせる中学生の作文もありました。テレビのサスペンス番組の中で刑事が被害者をガイシャと呼んでいることから派生したのかもしれません。言葉を改めれば思いが変えられるのか,思いがある限り言葉は変転するだけなのか,考えあぐねてばかりはいられません。
(2009年03月27日)
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