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【場に相応しく?】
人間(じんかん)いたるところに青山(せいざん)あり。披露宴などのおめでたい席で,励ましのつもりで語られてしまうことがあります。人生いたるところに青々とした山が迎えてくれる.住めば都だという思い違いをされます。正しい意味は,人間はどこにいっても,骨を埋めるくらいの場所はある。志のある者はいつ死んでもいいつもりで郷里を出て活躍すべきである,というものです。人間は「じんかん」と読み,世の中,世間という意味であり,青山は「せいざん」と読み,墓地という意味です。
月に叢雲,花に嵐。梅に鶯,紅葉に鹿,柳に燕という取り合わせの美しさを表す言葉があります。ところで,月に叢雲とは折角の名月に雲がかかること,花に嵐とは桜の花が満開の時に風が吹いて花びらを散らすことであり,よいことには邪魔が入りやすいということを言っているので,使い間違いをしないようにしましょう。
神様にも祝詞。何でもお見通しの神様ですが,それでも祈りの言葉を言わなければ,思いは伝わりません。人間に対してはなおさらです。できるだけ言葉を尽くして分かってもらえるように説明しなければなりません。相手がとっくに分かっているだろうと言う手間を省いたために,「知らなかった」「聞いてなかった」という失態が起こります。伝えるべきことはきちんと伝えていくことが,大事です。察してくれていると思える間柄でも,気分がすれ違っていると,無言の会話は成立しません。
茶碗投げれば綿にて受けよ。問答が行き詰まると,モノが飛んでくることがあります。夫婦げんかでは茶碗が飛びます。それを大皿で受けると,両方とも割れて修復不能になります。茶碗を綿で受ければ,どちらも無事です。売り言葉に買い言葉と言われますが,けんか腰の物言いに付き合って気色ばんで言い返すと,後の混乱は明白です。カチンと頭にきたりすると青い奴と言われます。相手の強さをこちらの柔らかさで受け止める度量が大人の処世術です。
三人寄れば文殊の知恵。文殊は仏教で知恵を掌る菩薩です。平凡な人間でも,三人も集まって相談すれば,いい知恵が浮かぶものという意味です。悩み事を一人であれこれ考えてみても,決していい解決策が見つかりません。煮詰まって心の負担が過ぎてしまうこともあります。そういうときには,人に相談するのが何よりです。その際に一人だけの意見を聞いても客観性が不十分であるかもしれないので,2人に相談します。すると,お互いの意見を批判するプロセスが働くので,よりよい解決策が見つかります。
相談者は,文殊の知恵を得たくて訪ねてきます。相談員が二人目にあたるのか,三人目であるのか,それぞれでしょう。一方で,相談員ももう一人の知恵が欲しくなります。
(2013年11月04日)
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