*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

 

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【中立のゼロ?】


 算用数字は,10世紀頃,インドで発明されました。商取引では数字が不可欠なので,アラビアとの貿易で使われているうちに,アラビアに伝わり,さらにヨーロッパにも伝わっていきました。アラビアから専門書を持ち帰ったヨーロッパ人が,この数体系はアラビア人によって考案されたと勘違いしました。そのまま事実を確かめもせずに「アラビア数字」と呼ぶようになりました。この数字が,大航海時代以降,世界中に広められました。
 指折りものを数えるとき,1から始まります。ゼロは10を表記するとき,位取りの数字として表れます。一方で,無を表すゼロが発見されたのは、ゼロ記号がインドで6世紀頃に数学の書物に登場していたことから、今から1300〜1400年前くらいだと考えられています。このゼロがあるから,プラスとマイナスの数字が生まれました。相談を受ける中立の立場はプラスマイナスどちらでもないゼロの立場になります。
 ところで,数字を使って計算をするとき,その筆記具に鉛筆が使われてきました。鉛筆という名は,古代エジプトやローマ時代の人たちが鉛のかけらを使っていたことに由来します。16世紀にイギリスでグラファイト(黒鉛)鉱山が見付かり,こちらの方が鉛より筆記具として適していると認められ,以降,鉛筆に使われるようになりました。当初は鉛を含んでいると思われて,black lead (黒鉛)と呼ばれましたが,後に鉛は関係ないということでグラファイトと名付けられました。鉛筆は,現在は工業的に大量生産されたグラファイトを粉末にして粘土と混ぜ合わせて作られています。粘土の量が少ないと軟らかく色は濃いめになります。
 フランクリンの罫線表というのがあります。話が込み入ってくると,フランクリンは白い紙を出して,鉛筆で真ん中に線を一本引きます。この線が数字のゼロを表し,右にプラス(+)左にマイナス(−)の印を付けます。相手の言い分を聞きながら「その点については,あなたの得で,それはコレコレ(金額の場合はその額)」と右の方に書き込み,また「この点については,あなたの方が損でそれはコレコレ」と左の方に書き込みます。こじれた話が一目瞭然,利害得失が表の上にはっきり出されてくるので,みんな重宝したそうです。
 相談を受けながらメモを取るときに,書き連ねていくよりも,線を引いて区分けしていくと,利害得失のみならず,対立点なども整理され,判断の助けになるでしょう。
(2010年10月10日)