*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

 

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【障がい者人権委員会?】


 県連合会に「障がい者人権委員会」を設置することになりました。総会で承認を得て発足する予定ですが,準備が進んでいます。そのいきさつを記録しておきます。

 平成22年8月26日の理事会において,会長より「障がい者人権委員会(仮称)」の設置について提案がなされ了解が得られました。協議会にも設置をするという段取りは急がずに,当面は県連にのみ設置して研修を深めつつ,協議会の意向に任せていくという運びが説明されました。

 平成22年11月29日の理事会において,設置に向けての準備要項が提案され,承認されました。
 @平成22年度中に1回目の会議を開催し,準備委員会を立ち上げる。
 A委員数及びその選出については,提案された要綱に基づいて,各協議会から委員を選出する。
 B各協議会での部会の設置については,改めて理事会で検討する。
 C他委員会と同様な位置づけとする。
 D当面の活動は,障がい者の現状や問題を把握するために,研修会の開催や当事者団体との意見交換を行う。その後,問題解決のための準備として,連絡先を把握するなど,関連団体や法令などの情報収集を行う。

 平成23年1月24日,第1回障がい者人権委員会準備委員会が開催されました。どのような委員会にするのか,意見交換が行われました。
《背景》
 国連で「障害者権利条約」が発効したが,日本での批准は準備中で,これからである。この条約は,当事者が主体的に内容を決めているという点で,従来の人権に対する考え方の枠を越えたものである。さらに,機能障害という障がい者に付随した障害ではなく,必要な資源があれば社会参加できると考え,その資源を備えていない社会に障害があるのであって,社会による差別となることを明確にしたものである。「合理的な配慮」をする義務が自治体にあるということである。
 従来の高齢者問題委員会に含めた取り扱いでは無理があると判断し,全国に先駆けて準備委員会を設置している。
《活動》
 ・先ず障がい者が直面している社会的課題を知る研修が必要である。例えば,必要な情報の点字化の不備,採用に関する障害による差別などがある。
 ・障害というものに対する共通理解を図る必要がある。例えば,障害か病気か,回復するのかしないのか,知的と精神の障害の区別,それぞれ個別に関わる社会課題のあれこれについて理解不足がある。
 ・県単位で研修会を開催していく一方で,協議会でも当事者との接触や自治体の情報の収集などをしていく。
 ・研修を進める一方で,活動の可能性を見極める意図も欠かせない。例えば,委員が代わりに課題の解決に向けた提案などを行うこともできる。
 ・この準備委員会は委員を固定せずに,関心のある委員に関わってもらう形で進めていく。また,当分の間,委員長は選出せずに会長が議事を進行していく。

 平成23年3月4日に,研修会が開催されました。講師には久保井摂弁護士を招き,「自立支援法見直しから見える課題について」という演題でお話をうかがいました。
 ・国が行う福祉の基礎構造が,措置制度から利用制度に変換し,障害者の自立を促すものになり,障害者自立支援法が施行されるようになった。
 ・法の中にある「応益負担制度」は重い障害の人ほど負担が重くなるという不合理がある。
 ・必要な支援を受益と見なすことが差別に当たるという問題が指摘され,法の廃止が約束されたが,事態は流動的である。

 以下に、いくつかの情報を付記しておきます。

【障害者とは】
 人間の体に現れる障害を一言で言えば、発達上もしくは事故や病気により身体的な機能不全や、行動・感情の制御ができなくなり、長期にわたって生活上の行動に制限を受けている状態ということができます。
 障害は社会通念上、身体障害・知的障害・精神障害の三つに分類されますが、同じ障害同士でも個人差は大きく、身体障害と知的障害を併せ持つ(重複障害)場合もあり、症状は非常に多岐にわたっています。

【障害の分類】
 「身体障害」は、先天的あるいは事故・病気など後天的な理由で、身体機能の一部に障害を生じている状態。
 「知的障害」は、先天的に金銭管理や読み書き計算など、日常生活や社会生活の上で頭脳を使う知的行動に支障がある状態で、認知症や事故による後遺症など後天的なものは含みません。
 「精神障害」は、先天的あるいは生活環境や薬物など後天的な理由により、様々な精神疾患が引き起こされた状態をいい、認知症など後天的な脳障害はこちらに分類されています。

【障害者の定義】
 日本の障害者基本法(昭和45年・1970年制定)第2条では、「障害者とは、身体障害、知的障害又は精神障害があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」と定義されています。
 国際連合の「障害者の権利宣言」(1975年)では、「障害者という言葉は、先天的であるか否かにかかわらず、身体的または精神的能力の不全のために、通常の個人または社会生活に必要なことを確保することが、自分自身では完全にまたは部分的にできない人のことを意味する」とされています。
 世界保健機構(WHO)による「国際障害分類(ICIDH)」(1980年)では、身体・個人・社会という3つの次元から、障害を機能障害(病気や心身機能の変調が永続化した状態)、能力低下(そのために諸活動の遂行が制限又は欠如すること)、社会的不利(その結果として個人に生じた不利益)という3つの階層の連続として定義していました。 しかし、視点が医学的過ぎる、障害の定義の流れが一方向過ぎる、環境要因に言及していないといった批判が見受けられました。そのため、WHOは2001年5月に、ICIDHの改訂版として「国際生活機能分類(ICF)」を採択しました。
 ICFは、心身機能に変調がある個人を多様な要因(環境因子・個人因子)との相互関係として捉えたものです。人間のもつ生活機能と障害について「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つの次元、及び「環境因子」等の影響を及ぼす要因の交錯関係から解明を試みています。
 また、3つの次元が問題を抱えた状態を「障害」とするという考え方にたっており、個々の障害を「機能障害」「活動制限」「参加制約」と呼んでいます。
 ICFの登場までは障害を定義するのに「医学モデル」と「社会モデル」という二つの概念モデルが提案されてきました。
 医学モデルは障害を個人の問題としてとらえ、病気・外傷などから生じるものであり、専門職による個別的な治療を行うことを主眼が置かれています。
 社会モデルでは障害を社会によって作られた問題とみなし、障害は個人に帰属するものではなく、社会のあり方を変えていくことが問題解決の手段と考えます。
 ICFはこの2つの対立するモデルの統合を目指して作られています。
 日本においては医療・福祉の両分野における専門職が、障害者に対応する時の行動指標としてICFを利用しています。
 また、平成14年12月に閣議決定された国の「障害者基本計画」においても、ICFの重要性が明言されています。

【障害者施策の動向】
○平成15年:障害者の自己決定を尊重し、サービス事業者との対等な関係を確立する観点から、行政に決定権があった福祉サービスを提供する仕組み(措置制度)を改め、利用者自らがサービスを選択し、事業者と直接に契約する新しい利用制度(支援費制度)が導入されました。
○平成16年度:「障害者基本法」の基本理念に「障害を理由とする差別の禁止」を明記する等の改正が行われました。
○平成17年4月:従来の身体・知的・精神という三障害の枠組みの中では、的確な支援が難しかった発達障害者に対して、その定義を明らかにするとともに、支援を行う体制整備を図るため「発達障害者支援法」が施行されました。
○平成17年10月:身体・知的・精神の障害種別ごとにサービス提供の仕組みが分かれていた状況を改め、市町村が一元的に福祉サービスを提供する仕組みを創設するとともに、利用者負担の見直しや国の財政責任の明確化を通じて制度の安定化を目指す「障害者自立支援法」が成立し、平成18年4月から一部施行、同年10月から全面施行されています。


(2011年03月08日)