*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【合理的相棒?】


 お茶碗一杯のご飯は,ほぼ三千粒の米粒があり,1日3食のご飯を食べると,一年間で三百万粒の米粒を食べることになります。米粒はイネ科植物のイネの種子であり,イネの命を頂いていることになります。
 植物の種子は,芽になる胚という部分と,胚が成長するための栄養である胚乳という部分とからなっています。胚乳はイネのミルクということで,種子は胚乳に蓄えられた炭水化物を酸素呼吸によって分解して発芽のためのエネルギー物質を生みだしています。ムギやトウモロコシなど食用になるイネ科の種子も,胚乳の主成分は炭水化物です。一方で,大豆は畑のお肉といわれるようにタンパク質を燃料としています。また,ヒマワリ,ナタネ等の種子は脂肪をエネルギー源としているので,ナタネ油のように油が取れます。
 玄米は人間が生きるために必要な栄養素をすべて含むために完全栄養食と呼ばれています。米粒は種子なので,炭水化物だけではなく,植物の生長に必要な栄養素を丸ごと持っているのは当たり前です。ただし,米と人間は違っているので,人間の身体に必要な栄養素の中で,一つだけ不足しているものがあります。アミノ酸のリジンです。このリジンを豊富に含んでいる植物があります。それが大豆です。米のエネルギー源が炭水化物,大豆のエネルギー源がタンパク質ですから,米と大豆は最良の組み合わせということです。
 ご飯に味噌汁,ご飯に納豆,お餅にきな粉,せんべいに醤油,日本酒に冷や奴,昔から親しんできた伝統的な日本食は,米と大豆の組み合わせになっています。欧米型の肉食が広まるにつれて,米と大豆の伝統食は影が薄くなっているようですが,もったいないことです。
・・・稲垣栄洋著「蝶々はなぜ菜の葉にとまるのか」(草思社)

(2012年04月08日)