*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【まだ大丈夫?】


 自動車のトラブルで多いものの一つがガス欠です。JAFの出動回数でも,必ず上位にランクされています。でも,考えてみると,おかしいことです。車には燃料計がついているので,ガソリンの残量が少なくなると警告灯が点灯して,知らせてくれているはずです。そこで対処すれば,ガス欠にはならないはずです。
 警告灯がついても,「まだ大丈夫,走れる」と高をくくる人がいるようです。もうちょっとの思惑が過ぎて,ガス欠を招いてしまうことになります。車は警告灯がついてから後,どれくらいの距離を走れるのでしょうか?
 警告灯がついた時点でのガソリンの残量を知る必要があります。JAFのテストでは,車によって違いますが,おおむね8〜11リットルの間ということです。このガソリン量で車が走れる距離は,約50キロメートルです。もっと走れるという車もあるでしょうが,悪路や渋滞などを考慮すると,50キロメートルと思っていた方が無難です。高速道路のサービスエリアは,この距離を想定して,ほぼ50キロメートル間隔で設置されているのです。
 警告灯がついたら,50キロメートル以内で,慎重すぎるほどで給油をした方がいいようです。

 ラ・ロシュフコー箴言集から。「助言の求め方与え方ほど率直でないものはない。助言を求める側は,友の意見に神妙な敬意を抱いているように見えるが,実は相手に自分の意見を認めさせ,彼を自分の行動の保証人にすることしか考えていない。そして助言する側は,自分に示された信頼に熱のこもった無欲な真剣さで報いるが,実はほとんどの場合,与える助言の中に,自分自身の利益か名声しか求めていないのである」。
 相談の場合,相談者と回答者に見えてくる心情を語った箴言とみなせば,「相談者に寄り添う」と意識することの意味が明らかになります。
 箴言はいましめの言葉であり,警告の言葉です。今のままでは不都合に至るので,今のうちに然るべき対応をしておきなさいという黄信号です。まだ大丈夫という自分の思惑に対する過信は禁物です。
 社会システムの中で人権侵害に関する警告を啓発することはできても,人にその警告を生かす慎重さが備わっていなければ功を奏しません。警告を認知する知性教育が必要ですが,それを生かす感性がなければ十分ではありません。人権感覚,それは自分の弱さを担保する配慮であるかもしれません。

(2012年05月16日)