*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【気がつかず?】


●お話を2題。

●一羽のフクロウが東の方に向かって、ものすごいスピードで飛んでいました。それを一羽のハトが呼び止めました。
「どうしたんだい? いつものきみに似ず、たいそう忙しそうにしてるじゃないか」。
フクロウはしょげながら
「もう、こちらにはいられなくなったのでね」。
「それはまた、どうしてだい?」。
「じつは、この里の人間たちが、ぼくの鳴き声をきらうのでね。だから・・・」。
「ふ〜ん、そういうことなら、東に移ったところで、またそこの人たちにきらわれるだろうよ。どこへ行っても、そういうことになる。きらわれたくなかったら、自分の鳴き声を改めることだね。他に方法は一つもないと思うよ」。

●『落ち穂拾い』などの名画で有名な画家ミレーが不遇で、生活に窮していた頃。
 ある日、『民約論』などの名著により世に知られつつあった親友のルソーが、ミレーの家を訪ねてきました。
「ミレー君、喜んでくれたまえ。君の画に買い手がついたよ」。
「エッ、それはほんとうか?」。
「ほんとうだとも。これをみてくれ」。
ルソーは、手にしていた三百フランの紙幣を見せました。
「買い手の人は、画の選択をぼくに任せてくれている。あの『接ぎ木をしている農夫』をくれないか?」
 ミレー一家は久しぶりに息をつき、窮乏から脱することができました。
 数年後ルソーの家を訪ねたミレーは、壁に『接ぎ木をしている農夫』がかかっているのを見ました。

(2012年06月30日)