*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【そんな面が?】


寿司屋で出されるお茶は熱くて飲めません。冷ましておこうと放置しておくと、冷めたところで熱いお茶に替えられます。寿司は生の魚を食べるので、脂ののったトロなどを食べると、口の中は油っぽくなります。この脂っこさを解消するために、熱いお茶が出されています。寿司は魚本来の味を大切にした料理であるため、味はとても薄いです。前に食べた魚の脂やツメが口の中に残っていたら、せっかくの寿司の味が楽しめなくなってしまいます。また,お茶が適温であると,お客がお茶を飲み過ぎて、寿司を食べられなくなると考えられているのです。
 世界地図を見るとき,極地の方には目を向けることは滅多にないでしょう。北極圏を見ると、グリーンランドという島があります。大した関心もなく眺めていると,何となく見過ごしてしまいます。実際は陸地の8割以上が氷に覆われている島です。グリーンランドは,緑の島という意味ですが,実態とは違っています。この島の発見者が、開拓者を誘致するために大嘘をついたのが発端です。本当は氷の島なのに,グリーンランドいう美しい名前を付けて、移民者を勧誘したのです。古今東西を通じて,この手口はまかり通っているようです。新興地の美しい名前が、折り込み広告に見られます。名前だけでも美しければ受け入れることができる,そういうゆとりがあるうちは、平和かもしれません。
 飲めないお茶,偽りの命名,一見矛盾しているのですが,人が生きていくために苦し紛れに編み出した訳があります。物事を一面から見ていると,存在の意味を見失うことがあるので、注意しなければなりません。
 物事だけではなく、人間も意外性を秘めている存在です。相手の中だけではなく自分の中にもある意外性を見極めることによって、人間関係は円滑に且つ魅力的になります。そのためには,いくつかのコツがあります。自分の見方はまだ一面的と考えること,相手の中にまだ自分の知らない意外性があるはずだと考えること,必ず意外性を発見してやろうと決意すること,より注意深い観察,推理,判断をすること,違う状況で相手と付き合うことなどです。
 相談などで対面するとき,相談という一面で相手を見ていることを自覚しておく必要があります。別の一面,意外性を秘めていることを想定しておけば,余裕のある対応ができるでしょう。
(2013年02月23日)