*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【救済検討委員会の発足?】


 人権擁護機関には,啓発・相談・救済という活動が期待されており,人権擁護委員もそれぞれに関わる役割を果たさなければなりません。そこで,委員の組織体である協議会や連合会においても,啓発・相談・救済という活動を過不足なく進めることができる体制にする必要があります。
 ところで,啓発や相談についてはかなりの実績をあげているように思われますが,救済という面では十分にやってきたとは言えない状況です。もちろん,委員が行う救済活動は法務局職員に同行して人権侵犯事案の調査を行うという段階までのものであり,その先の措置等については法務局の管掌になります。これまでにも,個々の事案について個別に委員が調査に同行してきましたが,その調査救済活動が組織体としての活動に位置づけられる形にはなっていません。組織の構造が整備されていなかったことを反省しなければなりません。
 連合会では,数年前から,子どもの人権SOSミニレターによる相談に対して,「緊急性・侵犯性・返信方針」に関する意見を表明し,法務局と協議が可能となるシステムを構築しました。救済の入口での判断を共有できることは,組織体としての連携を確保する上で不可欠のことです。目に見える機構を造ることによって,救済に向けた活動の動きを明示することができました。ただし,この機構は規約上には織り込まれていない仮のものであり試行の状態にあります。そろそろ,正式の機構として位置づける時期が来たと思われます。
 23年度のアンケート調査によると,委員が希望をする活動は,啓発活動42%,救済活動12%,啓発救済39%という割合でした。アンケートでは相談活動も救済の領域に含めていましたが,特に調査活動を希望する委員は23%でした。この結果を踏まえて,相談活動から救済に向かって一歩進んだ調査活動に関わりたいという委員の思いを受けとめる機構を整備する動きがはじまりました。
 24年度に各協議会より委員が出てきて,「救済検討委員会」準備会が発足し,どのような組織が可能であるかについて協議が進められました。連合会が置かれている状況や背景を共通認識し,何らかの専門機構の設置が必要であるという了解に至りました。新年度より新しい委員会が正式に動き出せるように,今県連総会に委員会要綱を提案し承認を受けるべく手続が進められています。提案が予定されている「救済検討委員会」の概要をまとめておきます。

 要綱の第2条:委員会は,@人権擁護委員の関与する人権救済活動について,調査研究を行い,A救済活動に必要な組織運営について審議し,その効果的実践を推進すると共に,B実務に関する研修を企画することを目的とする。

@救済に関する委員会を立ち上げるに当たって,まず考えられたことは,委員の救済活動に関するイメージが必ずしも共通ではないということです。法的な知識を駆使しなければならないような活動であるならとても無理な活動であるといったこと,調査に同行といっても職員に付いていくだけに終わるのではといったことなどが言われます。そこで,委員にはどのような救済活動が可能であるのか,どのように委員が動くことができるのか,といった救済の在り方を合議し,共通理解を図っていく部局の設置から始めることになりました。考える部局がなければ先に進まないという認識です。それが,救済について検討をする委員会です。念のために繰り返しますが,救済活動をする実動的な委員会ではありません。

Aそこで調査救済の実動をする何らかの組織を別に設置する必要があります。ただ,実動組織は全委員の関わるものとすることは当面の間必要がないと考えられて,限定されたものになっています。また,調査救済活動は常時行われるものであるために,小回りの利く少人数の組織が適当であることから,救済検討委員会の掌握の下に「救済検討会議」を開催することで対処することが想定されています。メンバーについては理事会の意見を聴して会長が決めることとされています。
 この会議は一定期間内の人権救済事案に関して法務局第二課との連絡と意見交換を図りながら,一方で,委員による調査救済活動の実績を掌握します。したがって,救済検討委員会に対して活動実績の報告等を行うことによって,県連として行っている救済活動という位置づけが確定することになります。なお,この会議は既に仮稼働しているSOSミニレター検討会議を吸収することになります。

A従来から実動している法務局職員との同行調査を行っている委員の活動を,県連及び協議会という組織の活動とするために,救済調査員という名称による登録制が導入されます。救済調査員は,活動報告書を救済検討会議に提出することになります。調査救済活動は事案に関わる地元の支局及び人権擁護委員により行われるものです。そこで,救済調査員は協議会毎に必要な陣容で登録されることになります。調査を希望する委員,専門性を持つ委員,経験のある委員などが想定されています。ただ,事案発生の不明さから調査に関与する委員が予め選出できないという事情等があり,登録は事前事後を問わないものとされます。
B救済活動について検討が進むと,委員に対する理解を図りつつ,実務上の研修をする必要性も考えられます。どのような研修をすればいいのか,救済活動に関わる委員への支援も委員会の検討課題となります。

 以上の概要は,総会で要綱が決定する前のものであることから,確定したものでありません。このような線で話が進んでいるという途中経過であり,今後修正がなされることがありますので,お含み置きください。細部については,総会承認後の委員会で協議されることになるはずです。

(2013年03月09日)