*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【分かる配置?】


 understand。分かる,理解するという意味の英語です。この英語は,underとstandの二つに分かれます。それぞれに意味があり,「下に立つ」となります。分かるという意味との関係が不思議です。英語に関わりのあるゲルマン系のアングロサクソンという狩猟民族では,リーダーが決定権を持っています。集団の中でリーダーの「下に立つ」ということは,リーダーの意図をくみ取り理解することが求められます。そこに堅い結束力が生じて強い集団になることができます。分かることは生き延びる上で必要なことであったのです。
 東洋の農耕民族にとって,山野を切り拓き山と里を分けたり,田畑をかき分けたりすることで生きてきました。長がどのように分けるかということを考え,皆が分かることで集団の作業が可能になります。かみ砕いて飲み込むという元の意味から,分けるが分かる,理解するという意味を持つようになりました。分には,分を弁えるというように,タテの関係を匂わせることもあり,「下に立つ」と通じるところがあるようです。
 分かるという関係が価値のある情報の話者から聴者への伝達であるとするなら,上位から下位に流れるという図式が想定されます。両者が同じ位置に立つと流れが悪くなるので,話者は強制的に伝えなくてはなりません。体罰は強者と弱者という上下の位置を無理強いすることで分からせようとする行為になります。リーダーを尊敬している場合は,分かろうという思いが自らを下位に置くことになります。相談を受けるときに傾聴という態度が求められますが,傾きという上下の位置関係を意図的に作り出すことにより,分かろうとしているのです。分かってもらおうとする演説や講義は,上段から下段に向かって言葉が流れるように配置されています。分かるということは受け入れることであり,水の流れの理に倣えば,下位で待ち受けることになると考えることができます。

(2013年03月31日)