*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【叩けよ?】


 拍手はいろんな意味を表現できます。歓迎,共感,賞賛,感激,感謝などがあります。拍手の起源はどうなっているのでしょう。古代ギリシャ・ローマの頃,手が体の器官の中でも上等なものと考えられており,霊的な面でも人間のシンボルとされていました。その尊い手から出た音を相手に聞かせることで、相手を褒め讃えるという意味をもたせたのです。やがて世界中に広まっていきましたが,拍手をするためには大勢の人たちの前で少数の人が何かをする状況が必要です。産業が発達していない地域ではそうした場面が少なくて,拍手は広まっていません。
 神社にお参りに行くと、拝殿の前で柏手を打ちますが,その意味はどういうことでしょう。柏手は元々神霊を呼び寄せる行為とされています。柏手の音で神を招き寄せて、相手の魂を元気づけるのであり,三本締めの手拍子はこれに近いものです。神社の前では、願い事をする前に、きちんと神様を呼んで聞いてもらわなければならないのです。
 ところで,相撲には、片足を持ち上げて地面を力強く踏みしめる四股というしぐさがあります。何の意味があるのでしょう。古代の日本では、生命力を与えてくれる神は地下に住んでいるされていました。これは農耕民族独特の発想で、狩猟牧畜民族では天に神がいると考えられていました。この大地の神の力を増大させるには、大地を揺さぶることが必要とされ、足で大地を踏みならすしぐさが生まれました。さらには,いったん受けた霊力を保つために足を地面から離さないすり足というしぐさもあります。
 かつて人が迷い苦しむときにすがり救いを求めたのは、神でした。苦しいときの神頼みで,神が身近にいることで,ご加護がなされていました。ひどいことをする人にはいずれ罰が当たる、天罰覿面という気持ちの救済がありました。しかしながら,存在不証明という理由から神を失ったことで,すがる対象を失い,見えない手による救済も期待できなくなりました。わらにもすがるという切羽詰まった思いから相談の扉が叩かれるとき,本当にわらだったということがないようにしたいものです。
 ところで,幸せなら手を叩こうという歌がありました。どういう意味があるのでしょう。
(2013年07月10日)