*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【相手の立場?】


 アメリカの作家マーク・トウエンが,説教を聞いた後に「たいへん感銘しました。ただ一語一語みんな私の愛読している本に書いてあることでしたが」と言いました。説教者が「そんなばかな」と怒ると,「では,さっそく証拠の本を送りましょう」といって帰りました。後日,説教者が手にした本は,一冊の国語辞書でした。またトウエンはこんなことも言っています。「競馬を成り立たせているのは意見の相違である」。自分だけは正しいという意見がそれぞれ違っているという皮肉です。
 レミングというネズミは,突然に群れをなして海に向かって落ちて死ぬという不思議な習性を持っています。アメリカの作家ジェームス・サーバーが,レミングとの対話を書いています。「キミたちはなぜ海に突進して溺死するのかね?」。するとレミングが答えました。「なぜ人間たちは,それをしないのかね」。生きているものの行動は,お互いに分からないものであり,一方の当然は他者には当然ではないのです。
 韓の国の王,昭侯が入浴していると,お湯の中に小石が入っていた。昭侯は家来を呼び,「風呂番の長が免職になると誰か代わりの適任者があるか?」と聞きました。家来たちが「あります」と言えば,昭侯は「その者を連れたまいれ」と。その男が現れるといきなり叱りつけました。「お前はなぜ風呂に小石を入れたのか?」。果たせるかなその男,平伏し,「風呂番の長が免職になれば私が長となれます。それゆえ風呂に石を入れました」と白状しました。他人の悪口を聞いたときは,この話を思い出すことです。軽率な判断を避けることができるでしょう。
             《ユーモア人間一日一言:阿刀田高著より》
(2014年02月05日)