*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【幸せに生きる第5条件:希望する権利】


 小学校5年の男の子が,父親に通信簿を差し出しました。恐る恐る叱られるのを覚悟の上といった態度に,父親は嫌な予感がしました。案の定,国語の成績が5段階評価の2になっています。父親は中学校の国語の教師で,カッとなって「お父さんの顔に泥をぬる気か!」と,言葉が出かかるところを,グッと抑えました。思い直して,こう言いました。「おい,だいぶ低空飛行だな」「?」「しかし,望みはある,大いにある」「?・・・」「後は上がるばっかりじゃないか」。
 子どもは,みるみる明るい顔になって,「お父さん,ごめんね。2学期はボク頑張るよ」。2学期,子どもは成績を4に上げました。このときも父親の一言がありました。「よくやった。しかし,あわてて5までにいくな」「え?」「後は下がるばっかりだからな」。

 生きていると,思い通りにことが運ばないことばかりです。神や仏が試練を与えていると考えて,辛抱し耐えています。そこには,苦労の後には楽があるはずという思い込みがあります。幼い頃に聴いた昔話は,最後の言葉が「めでたしめでたし」です。いろんな紆余曲折の後,ハッピーエンドです。好事魔多しと言う一方で,塞翁が馬という故事を思い出して,頑張ることができます。
 行き詰まって生きることを辞めたくなるとき,一縷の望みがあれば,引き返すことができます。ままならない憂き世の中で,か弱い人間が生きていける理由は,希望があるからです。絶望とはこの先生きていてもいいことがないという思い込みです。どうせなら,希望が適うはずという思い込みの方が幸せになれるでしょう。日々の暮らしの中でささやかな希望が見えてこないときは,「なんとかなる」というまじないをつぶやくことです。希望が現れてくるはずです。

(2015年01月06日)