*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【幸せに生きる第6条件:学習する権利】


 アメリカの詩人ロングフェローは老境を越えても、頭髪こそ白くなりましたが、顔色は良く肌もつやつやしています。久しぶりに会った知人が「ずいぶん若々しいですね。秘訣は何ですか」と尋ねました。ロングフェローは庭の大きな木の方に顔を向けて答えました。「あの木を見てみなさい。あの木はもう老樹といってよいでしょう。それでも毎年,あのように花を咲かせ、実をつけています。そうできるのは、毎日,少しずつでも生長を続けているからです。老年になっても、たとえ少しずつでも成長しようと心がけています」。
 人は先人から膨大な知恵を授かることによって,しあわせになることができます。繰り返されていく世代の交代は,振り出しに戻ることではなくて,らせん階段のようにしあわせに向かって世代ごとに一段ずつ登っていくことです。もちろん,知恵をしっかりと受け取り,心豊かになることが,しあわせの階段に擬せられるのです。成人するまでに10数年が必要であるという生育期間は,それだけ膨大な知恵を受け取る容量を確保していると考えるべきです。
 人のしあわせには,知恵を受け継ぐことを目標に学習する権利が必須です。これまでに取り上げてきたワタシの権利,決定権,安心権,表現権,参画権,希望権が,たとえば真善美といった共有すべき価値に適うものになるためには,知恵の裏付けが必至です。学習のない権利の行使が、他方で権利侵害を招くことは明らかです。
 権利は社会の中で生きているものです。その社会は人々がお互いを尊重するために知恵を共有しています。知恵はともすれば一人歩きをしてその目的を逸脱することがあります。お互いを尊重するという権利のあるべき形を知恵の隅々にまで実現することが,しあわせな社会に向かう道筋です。

(2015年03月09日)