*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【ほどよい?】


 ギリシャ神話に出てくるキプロスのピグマリオン王が女性の彫像ガラティアに恋い焦がれ現実の女にしてくれと願ったら,女神アフロディテにより人間になったという伝説がありました。大人の期待によって子どもの成長が向上する心理的効果をピグマリオン効果といいます。さらに,大人の肯定的な期待に接することで子どもが自己成就することをガラティア効果といいます。一方で,大人が子どもにマイナス印象ばかり持ってしまうと実際にダメになることをゴーレム効果といいます。ゴーレムとは泥人形のことです。
 子どもの人格形成には,弱さや欠点なども否定することなく、自分を好ましいと思う自尊感情が必須です。アメリカの心理学者ウイリアム・ジェームズによると,自尊感情=成功÷願望という公式で表されます。たとえば,良い成績を成功とするなら,それを願う気持ちが強いほど分母の願望が高まり,失敗したときは自尊感情が低くなります。逆に失敗ばかりしている人でも,願望が高くないと自尊感情が低くなることはありません。何を成功と見なすかは、人それぞれです。失敗しても、それが次につながると考え、ある種の成功と思えば自尊感情は高くなります。
 アメリカの心理学者ローゼンバーグが自尊感情尺度を提唱しました。自尊感情の高い人は自分自身を「これでよい(good enough)」と考えているとしました。これは,自分自身を「非常によい(very good)」と考えることが自分を他人と比べて評価しているのに対し,「人は人,自分は自分」と考えていることを表しています。つまり,自尊感情が高い人は、自分で自分に価値を見いだすことができるということです。
 アメリカの心理学者マーティン・セリグマンが学習性無力感という概念を提唱しました。回避できない厳しい状況に長期に置かれると、その状況に立ち向かおうとする行動をとれなくなるというものです。無気力は学習によって身につくというのです。厳しい状況でもなんとかして回避したことがあるという学習をすれば,無気力から免れるということです。
 なんとかしたいと思うから相談に来られます。なんとかしたいとも思わない,回避する気にならない状況にある人に,どのような期待を持って接したらいいのでしょうか?

(2015年07月08日)