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【構え無用?】
西郷隆盛と会談して江戸城の無血開城をした勝海舟は,学識がずば抜けていたほかに,剣術も免許皆伝の腕前です。しかし,何より卓抜していたのは人間を見る眼の確かさでしょう。常々「学問ばかりではだめだ。人間そのものを学ぶこと。つまり,人間学をやることが大事だ」と言っていた海舟です。この人間学とは,人と付き合うことであり,身分や考え方などに拘らず分け隔てなく付き合うこと,なのです。
ある日,坂本竜馬が海舟に面会を求めてやってきました。海舟は竜馬の顔を見るなり言い放ちました。「お前さん。おれを切りに来たな」といっても,落ち着き払ったまま,海舟はにっこり笑っていました。続けて「まあ,おれを切る前に,ちょっとおれの話でも聞いてみないか」と出ました。こいつは話せば分かる人間だと,一瞬のうちに分かってしまったのでした。
竜馬はそんな海舟の太っ腹な態度に,すっかり惚れ込んでしまいました。悪く勘ぐれば,海舟一流のハッタリです。しかし,そのハッタリは自信と実力に裏付けされていたからこそ説得力が備わっていたのです。
具体的な職業上の面談では,それなりの専門知識がなければ話になりません。しかし,初対面の人との面談では,事前にどのような専門的な構えをしておくことも不可能です。むしろ,まさに人と人との向き合いをするしかありません。また,人権相談では,人が生きていくことに関わる出会いになるので,温かな人間関係を結ぶことができるように心掛けることが大切です。
(2017年05月04日)
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