*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

人権メモの目次に戻ります

【チェックシグナル?】


 文明堂の創業者である宮崎甚左衛門が,昭和の初めに,出入りしていた三越の食料品部の社員から話しかけられました。「大阪のすき焼き屋で"肉は一番,電話は二番"と面白い宣伝をやっている店があるよ」。宮崎は「へえー,そういう宣伝文句もあるのか」と,感心したものの,それ以上の関心は湧きませんでした。
 しばらくして,宮崎は大阪に仕事で出かけたおり,食事をしようとして,ふいと先の言葉を思い出しました。タクシーの運転手さんに"肉は一番,電話は二番"というと,運転手さんは即座にうなずいて,「宗右衛門町のHやな」と,タクシーを走らせました。
 宮崎は驚きました.店名もいわないのに,そのキャッチフレーズだけで店が分かるのです。宣伝とはこういうものかと大いに得るところがありました。宮崎はこの宣伝文句を文明堂にいただいてしまいました。因みに,「三時のおやつは・・・」は昭和38年に付け加えられたものです。
 キャッチフレーズとは,宣伝・広告などで,人の心をとらえるように工夫された印象の強い文句です。啓発という活動においても,覚えやすくて大事なメッセージを伝えられるようなものが望まれます。フレーズではなくて言葉でも,人を動かすことができます。例えばセクハラという言葉が現れて以来,一部の行動に大きな変化がもたらされました。パワハラやドクハラという言葉もチェックシグナルとして拡散しています。
 「嘘つきはドロボウの始まり」というフレーズになぞって,「無視はいじめの始まり」,「○○のくせには差別の始まり」,「女だからはセクハラの始まり」などのフレーズを創作することで,啓発の新しいアプローチが生まれるかもしれません。

(2018年05月04日)