*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【中快?】


 ジョージ・ワシントンがアメリカの初代大統領に選ばれたとき,その妻マーサは当惑しました。大統領夫人としての振る舞い方の前例が全くなかったからです。自身でしきたりを作り出すしかありません。
 まず,大統領に夫が就任後最初のレセプションで,マーサはお茶とお菓子で客をもてなし,気軽に客たちの間を歩き回って話をし,できるだけ質素で民主的な雰囲気を作り出すように努めました。すると「あれでは少し品がない」という批判が出ました。それではと,次のパーティでは少し贅沢をすると,今度は「王様の真似をするな」と非難されました。万事がこの調子で,マーサの気疲れも相当なものでしたが,なんとか夫の体面を傷つけまいと頑張りました。
 また,マーサは飾らない気さくな性格で,政治問題にはけっして口出しをしませんでしたが,夫の仕事に無関心というわけでもありませんでした。ワシントンと副大統領のアダムスの間は,ともに自我が強いこともあって,とかくギクシャクしていましたが,マーサは親友のアダムス夫人アビゲールと協力して,それぞれの夫たちが仲良くするように力を尽くしていました。
 こうして,マーサは次第に人々の愛情と尊敬の念を得るようになり,官邸を訪れる人たちが快いもてなしに感激するようになり,国の母となっていきました。
 オリパラ大会でのおもてなしが気になっていますが,そこまでやらなくてもと控えれば気持ちが届かずに,そこまでやるかと頑張れば余計な勘ぐりを受けかねません。ほどほどのところで思いきって,中くらいの快さを保つことが,おもてなしの誠意のようです。相談というおもてなしも,おもてなしを受ける側にほどよいものでありたいものです。

(2018年09月06日)