*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【互願?】


 生後19ヶ月に激しい腹痛を起こして病んだ後,目と耳の感覚をまったく失った女の子がいました。手掴みで食べ散らかし,気に入らないことがあればものを投げたりぶったりしていました。両親は盲学校を訪れ,家庭教師を紹介されました。忍耐強い教育が続きました。
 ある日,庭に駆け出した女の子は,水道の蛇口をひねって出てきた水を両手ですくいながら叫んでいます。いつもの叫び声とは違って,何かに感動している声だと聞こえました。やがて,女の子は水を捨てると,教師の手に「冷たい」という合図を指を送りました。
 教師の目には涙がにじんでいました。女の子はとうとう外界を理性的に把握することができたのです。これが,見えず,聞こえず,話せないという三重苦を背負ったヘレンケラーが外部と,そして他の人と意思の疎通が持てるようになったきっかけでした。
 もともと高い素質を持っていたのでしょう,ヘレンは一度きっかけを掴むと,その後の進歩は早かったようです。ヘレンはやがて目と耳の不自由な者として世界で初めて大学を卒業しました。
 SOSミニレターを通して,子どもの負の思いを受け止める機会があります。子どもは伝えたいと願いながらも,その伝え方が未熟であるため,伝わらないことがあります。言った,聞いてないというコミュニケーションの不成立が起こります。分かるように言ってくれなければと,普通には言い方の未熟さが問われます。でも,相談は分かってほしいという願いが届けられます。その願いに寄り添うためには,分かろうという願いを相手に向けて届けなければなりません。叫ぶだけの子どもの訴えを,きちんと受け止めて,このように分かったと伝えることによって,相談という寄り添いが完結するのです。
(2021年05月09日)