*******  心 の 指 南  *******

〜育てよう ドウゾと言える 健やかさ〜

【要 約】
 この小論では,まず序で,子どもたちが起こしている問題行動の背景には他者意識の欠落があると考察しました。他者との共存が社会の姿ですから,社会性とは何かという課題を抽出しています。
 次に,人の社会的行動の中で,悪行には普段迷惑をかけないという黄色信号の抑止と,法という赤信号の禁止との二段構えになっていますが,この制止系だけでは有効でないことを青少年の問題行動の顕在化が示していると考えました。
 そこで,犯罪や非行などの問題行動は基本的に搾取つまりテイク行為であると定義付けをし,バランスを確保する目的で「ギブアンドテイク」という概念に秘められているギブ行為の社会的意味を分析しました。その結果から,アリガトウとテイクするよりドウゾとギブすることを優先することが社会の基本理念であることを明らかにしました。ギブ指向が行動の青信号であり,同時に他者尊重の必須要件であることが分かりました。
 しつけは自立を目標にしていますが,その自立概念の未成熟にも触れています。
 しつけを意図的な教えと無意図的な学びに分けてみました。子どもにギブ理念を教えるためには,ギブアンドテイクがセットである点に着目し,大人がアリガトウと受け取ってやればいいということ,さらに弱い者を守るギブ行為のしつけの緊急性などに言及しています。一方で,ギブ理念を学ばせるためには,専門性や役割意識に閉じこもることなく,ギブ指向が人や社会をつないでいる事例を子どもにあらゆる機会を通して見せていくことの重要性を提案します。
 結びでは,ギブ理念こそがしつけの王道を歩く道標であると結論しています。