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【子 育 て 羅 針 盤】
★パパコラム★
『身の程を 越えた話に 悩まされ』
(第2号)
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身度尺という言葉があります。夫婦茶碗は男女の手の平に合わせて大きさが変えられています。尺二(一尺二寸=40p)のお盆は抱えたときにちょうど肩幅と同じになるので,半間幅の廊下ですれ違っても邪魔にならない大きさです。道具は使う人の身体にあわせて作られてきました。
道具と同じように,物事にも適正な大きさがあります。古代ギリシャの民主政治は都市規模だからうまくいったのであって,億単位の人口からなる国の規模では無理が生じます。人間的関わりの適正規模を遙かに超えているからです。個人の意思表示が幾重にも連なった間接的な集約によって,最終段階では大きくずれてしまいます。大都市の人間関係が壊れているのも同じです。大きな社会組織では,個人の思惑などは無視されます。いちいち構ってはいられないというわけです。規模による個人と社会の乖離作用が働いています。
身近な話では,給食に箸を使わせたいという話題がありました。保護者は箸ぐらいと思っていますが,数百人の箸となるとその処理に関わる人員設備等の経費は大きなものになります。規模の圧力が発生するのです。ゴミ問題も似ています。小さなポイ捨てが大きな問題に変わります。使いやすさという個人の志向が積もり積もって環境問題に変質していきます。
自分のことはできるだけ自分で完結するようにすれば,規模の圧力によって生じる社会的問題は大きく軽減できます。人の力にすがろうとしたり,社会を利用しようとする風潮が蔓延すれば,その積算された結果は悲惨なものになるでしょう。
大きな社会を営むには,それなりの精緻な神経系統が不可欠です。それが情報化です。ただし情報ネットワークはあくまでも絵空事の世界です。現実の世界では規模の圧力が厳然としてのしかかっています。情報を元に物事を考えるときには,規模による情報の変質を考慮しておく必要があります。
きわめて個人的な夫婦や親子について語るときにも,時代や社会に結びつける論調が飛び交っています。お話としてはおもしろいかもしれませんが,自分個人にまで縮図として直結することは無謀です。ガングロが流行っていたときも,それはやはり一部の世界であり,マスコミによる増幅作用が働いていました。情報を無視すべきということではなく,すべてと思いこまないようにということです。規模の効果に振り回されない落ち着きが大切です。
いろんな場面で「規模」という視点から物事を眺めてみると,新鮮な展望が拓けてくることでしょう。
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【子 育 て 羅 針 盤】
★子育ち12章★
『ママの手を 握って眠る 小さな手』
《第2章》
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■はじめに
第1章では「子どもの居場所」について,考えてみました。
種は豊かな大地に触れることで発芽します。
同じように子どもは家族としての居場所があって育ちます。
自分を「透明な存在」と思った子どもがいましたが,
それはどういうことなのでしょうか?・・・それが今回のテーマです。
「人間の存在を決定するものは,人間そのものではなく人間関係である」
と,作家の尾崎士郎が言っています。これを手がかりにしましょう。
歩き始めの幼児は母親が側で見ていると伝い歩きの手を離します。
見ていないと手を離しません。
母親が側にいると安心し,情緒が安定し,余力を成長に注ぎます。
頼りになる母親がいるから,育とうとします。
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【質問2:あなたのお子さんには,親との信頼関係がありますか?】
《「信頼関係」という言葉について説明が必要ですね!》
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人間関係をいくつかに分類してみます。パターン化すれば関係の本質が見えてくるからです。親から自分はどう思われているかという子どもの立場で読んで下さい。
(1) いない方がよい人
もし母親から「お前さえ 生まなきゃ」と言われたら,子どもは生きることに「絶望」します。そこまであからさまではないにしても,ちょっとしたすれ違いが起こることがあります。
もうすぐ夕食という頃が最も空腹になります。子どもが「ねえ,クッキー食べていい?」と言ってきます。ママは「だめ,もうご飯なんだから。お菓子ばっかり食べちゃだめ」と言い切ります。その語調は「余計なことは言わせないで,あっちにいっていて」と邪魔そうです。お呼びでない虚しさが襲います。たとえば,ママが「そう,おなかすいたの。クッキーおいしものね。でも,もっとおいしいものもあるのよ,ちょっと待ってね」と,空腹であることを認めてやれば,子どもはそれで満足します。同時に邪魔にされないで済みます。
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(2) いてもいなくてもいい人
忙しい家庭の中で,手の掛からない子どもが育っていきます。親にはいい子かもしれませんが,子どもはどうでしょう。いつの間にか自分なんかいてもいなくてもいいのではないかと思うかもしれません。一人ぽつんとなんとなく生きていると思ったなら,自分は何なんだろうという「不安」が脹らんできます。
子どもよりパパが重体なのかもしれません。男の子が帰宅しましたが,母と姉は不在で,父が新聞を読んでいます。男の子は「誰もいないのか!」とつぶやきました。パパは存在感を取り戻そうと,ある日小さなお菓子を10個買ってきました。夫婦が2個ずつ,子ども2人は3個ずつという心づもりでした。おやつの時間になり,パパが自分の皿を見ると1個です。ママと子どもたちはそれぞれ3個でした。似たようなことは茶飯事です。子どもはポケモン,パパノケモンという寂しさです。
いてもいなくてもいいと思われていると感じたら,子どもは自分の存在性を保持させるために,嫌われないように気配りして暮すようになります。いつも防衛的ですから緊張・ストレスの連続で,やがて心身をすり減らします。分ってもらえない苦しさを避けるために,心を閉ざしてしまうこともあるでしょう。自分という存在を透明にしていきます。
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(3) いてもいい人
「あなたは勉強さえしていればいいの」と,生活から隔離されているような状態です。家族がそれぞれ自分だけの暮らしをしているクールな関係です。最近流行した「パラサイトシングル(実家に寄生している独身若者)」は,このような関係の行き着く先なのです。一見自立しているようで,肝心の生活部分はしっかり依存しています。ちょっと気配りのできる子どもであれば,自分だけが遊んでいるようで落ち着かないことでしょう。
いじめの人間関係も似ています。まず,一応友達としてグループに取り込みますが,いつも境界域に排除しておきます。決していじめられっ子をグループから追放はしません。グループと付かず離れずの所に縛り付けておきます。いじめを陰湿にしている要因は,「飼殺しの状態」においているからです。
家庭でも「自分のことは自分で」というしつけだけを厳しくし過ぎると,家族であって家族ではないような「不安定」で曖昧な存在に追いつめてしまう危険性があります。家族であるとは,生活上に持ちつ持たれつの相互関係がなければなりません。
家庭の雑事を「うるさい用事」と思うように育てられた子どもは,生活から逃げるようになり,自立からは見放されます。寄生しているパパも他人事ではありません。
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(4) いなくてはならない人
子どもは甘えることから育ちはじめます。十分に甘えさせてやりますが,いつまでも甘えん坊で依存していては困ります。そこで甘えを止めさせようとしつけをします。依存しないことが自立することであると思われています。確かに半分はそうですが,半分は思いこみという誤解です。自立という言葉の定義は何かをしないことではなくて,何かをすることでなければ意味がありません。
パパは自分が会社でも家庭でもいなくてはならない人物であることに張り合いを持っています。病に倒れ見舞いを受けるとき,「早くよくなって出てきてもらわないと皆が困っています」と言われればご機嫌がよいのですが,「後はちゃんとやっていますから,どうぞゆっくり養生してください」とでも言われたら落ち込みます。自分がいなくてもいいと引導を渡されるのですから,つらいのは当然です。必要とされていることが自立の証だからです。
桃太郎のチームリーダーとしての手腕を見てみましょう。犬は猿とは犬猿の仲です。ところが桃太郎の家来として協力しています。どうしてでしょうか。犬は桃太郎と,猿も桃太郎とキビ団子契約でつながりました。犬と猿はそれぞれ桃太郎に協力するという形でつながっています。チームとしてのポジションを与えられ役割を担っています。共同体の中で責任ある役割があるということが,存在感を実感させてくれます。ケンカをする必要など失せてしまいます。
共同体ではお互いに役割を担うことが大切です。言い換えれば,相手の役割に依存してもいいということです。お互い様なのです。忙しいママはお使いや手伝いなど,子どもに依存する,つまり頼ればいいのです。頼られればそれに応える,それができたとき自立したことになります。必要とされている,頼られている,いなくてはならない人と思われている,それが気持ちを「安定」させ生活の充実感をもたらしてくれます。
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(5) いて欲しい人
社会的な関係では,いなくてはならない人と自覚できていれば十分でしょう。しかしながら,人間関係としては,まだ不十分です。定年になって役に立たなくなったらお払い箱です。パパの名刺から肩書き役割がなくなったら,さみしくなるはずです。
4歳の男の子がオネショをするようになりました。妹が誕生してまもなくのことです。ママはあちこちに相談に行きますが,いっこうに止む気配はありません。そんなつらいある日のことです。オネショをしなかったのです。ママは「できたね」と思いっきり男の子を抱きしめました。そのときです,「あのね,ママ。またできたらだっこしてくれる?」・・・。母親の膝を妹に奪われた寂しさ,不安に駆られ,無意識に自分への注目回復のためのオネショでした。下の子に手が掛かり,上の子を心ならずも邪魔にしてしまうことがあるかもしれません。何か処し方はないのでしょうか?
つわりのひどいママがいました。幼い女の子がいます。祖母が女の子をしばらく預かろうと申し出てくれました。でも,ママはある決意から断りました。数日前,トイレでしゃがみ込んでいたときのことでした。苦しさの中でふっと気が付くと,背中を小さな手が一所懸命にさすってくれていました。「この子といっしょに産もう」と思ったからです。幼児でも大人に力を授けられるます。大したことはできなくても,いてくれるだけでいいのです。
子どもはパパが出張先から買ってきてくれるおみやげを喜びます。ところが,数日するとおみやげは飽きられて隅に転がっていることがあります。せっかく買ってきてやったのにと,パパはおかんむりです。でもそれでいいのです。おみやげは出張先でも子どものことを気遣っているから買って帰ります。子どもは「パパは出張していても,自分のことを気に掛けていてくれた」という証拠として受け取っています。パパの気持ちを確認できれば,おみやげそのものはどうでもいいのです。でも,ママが「子どもにばっかり」とにらんでいることにご注意!?
お互いに役に立たなくても,いるだけで「ほっと安心する」関係,それが家族の人間関係です。
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《子どもに必要な信頼関係とは,親が好意的であると信じられる関係です》
○子どもはいつも親とのやりとりの中で「好かれていることの確認」をしようとしています。子どもに自分は「Wanted Child」であると思わせる気配りが大事です。「叱られても嫌われない」という親との信頼があれば,子どもは安心という根っこを家庭に張り,元気よく育っていきます。
【質問2:あなたのお子さんには,親との信頼関係がありますか?】
●答は?・・・もちろん「イエス」ですね!
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★編集後記★
お届けした「子育て羅針盤」第2号はいかがでしたか。共通するような体験をお持ちでしたら,ぜひ教えてください。
◎途中から購読されている方へ
第1号を発行(9月25日正午)後に購読登録をされた方は,恐れ入りますが配信協力先,もしくは下記の発行者URLからバックナンバーをコピーしてくださるようにお願いいたします。
☆予告☆
次号では
【質問3:あなたのお子さんは,正しい言葉づかいをしていますか?】
について考えます。お楽しみに!
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○タイトル:『子育て羅針盤』 [KOSODATERASINBAN]
〇発行責任:モリのクマさん
○発行期日:2000年9月25日より,毎週月曜日
○連絡mail:mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp
〇URL=http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/MailMag/MMannai.html
〇転載許可:クマさんまでメールのご一報下さい。
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