《パパの子で よかったという ほめ言葉》

 伴侶のことをベターハーフと言います。恋愛時代はベストの人と思いこんでいますが,結婚して一緒に暮らすうちにベターな人に落ち着きます。ところがやがて単にいい人,つまりグットな人になり,ついにはいてもいなくてもいい人へとランクが落ちてしまうこともあるようです。
 伴侶と違って,親子はともに自分で選ぶことができません。それだけに事情は厳しいものに思えます。子どものころ,友達と入れ替わって「あの家の子どもになりたい」と思ったりしたことはないでしょうか。振り返って,別の家の子どもだったら,今の自分とは変わっていたかもしれないと思うことはありませんか。
 どの親の子どもとして生まれたか,そして親が築く家庭のありようによって,子どもの将来が条件付けされています。意識に上らない,見えないへその緒です。
 親の禁句は「うちの子ではない」という言葉です。「そんな子に育てた覚えはない」と突き放し,子どものせいにしてしまうのも卑怯です。「言うことを聞かない子はいらない」と言われたら,子どもは不安におびえるだけです。
 夫婦も親子も,相手にベストを求めたり,自分がベストであろうと努めたりすると,お互いに疲れるだけです。その疲れが焦りを生み,自分を責め,相手の不実を嘆く言葉になって現れてきます。
 ベストでなくてもいい,ベターであればいいと思えばゆとりが生まれ,気が楽になり,言葉も優しくなります。楽な関係の家庭こそが人の落ち着く居場所です。居場所が確保できたら,子どもは前向きに育つことができて,この家に生まれてきてよかったと実感できるのではないでしょうか。

(No.15:リビング北九州:97年4月19日:1203号掲載)