《子が育ち 手がかからなく 邪魔消える》

 テレビの中の女性が,「子どもなんかいらない」と言います。あなたの親がそう思っていたら,あなたは存在していないんですよと言ってみたいものです。
 長寿社会と少子社会の衝突は,福祉や年金の問題に波及しています。連れ合いは子どもが少なくなる風潮が不思議のようで,「年を取ったらどうする積もりなのか」と,ひとごとながら心配のようです。「子どもなんかいらないと言い放つ身勝手な者が,他人が苦労して育てた子どもに,同じように老後の面倒を見てもらおうと思っているとしたら,それはチョー不公平である」という趣旨の意見を読んだことがあります。
 子どもを保育園や幼稚園に「預ける」という言い方をします。荷物を預けるという言い方と同じです。子どもが小学校に入学したとき,「これでやっと手がかからなくなった」という親がいるようです。ほっとしていると言えば言い過ぎかも知れませんが,子どもの身にすれば,自分は親にとってお荷物なのだと思わざるを得ません。「あなたはどうしていつもそんなに迷惑ばかりかけるの」と言われても,子どもは親に迷惑をかけようとは思っていません。
 「子どもをつくる,つくらない」という会話もあるようです。”作る”とか”造る”というのは物に対して使う言葉です。子どもを授かるとか,子どもを産むといった言い方をしなくなったのはなぜなのでしょうか。一方では,「子供」という書き方に,子どもは「お供え」ではないと不快感を覚える人もいます。
 子どもに関する言葉づかいに注意すると,その人の子ども観を伺い知ることができます。もっとも敏感に感じ取っているのは,子ども本人でしょう。

(No.20:リビング北九州:97年7月5日:1213号掲載)