《親免許 子どもの良さに 気付くこと》

 講演会の講師にお招きを受けたとき,最初に必ず「お一人様一個限り」とお願いをしています。テレビのスペシャル番組ほどの時間ですから,たくさんのことを話します。聴衆にとっては,長い講演の最初から終わりまで緊張感を保つことは無理ですし,また聞かされる話題も広範囲に渡ります。講演内容をすべて吸収しようとすることは,欲張りというよりも不可能なことです。
 そういう聴き方をすると,講演が終了し自宅に帰ったとき,今日は何の話を聴いたのか思い出せなくなります。何か心に刺激がある一言だけを聞き取り,あとは次回の楽しみにまわすつもりでいれば,今日は一つ聴いたと手に残ります。これがお一人様一個限りのお願いであり,知恵を身に付けるコツです。
 子育てをする場合も同じで,あれもこれもと欲張らない方がうまくいくようです。母さんの言うことは毎日違うと子どもに思われるのも,欲張っているからです。宿題を早く済ませなさいと言っているそばから,ゆっくり考えなさいと言います。これでは子どものリズムは狂います。
 一芸に秀でると言われます。何か一つ得意なものがあれば,ほかのことはそこそこについてくるものです。「二兎を追うものは一兎も得ず」ということわざもあります。子どもについても,当面の願いは一つにしておきましょう。
 犬の面倒だけはしっかりみている。朝自分で必ず起きてくる。友だちの悪口を言うのを聞いたことがない。国語だけはできる。妹をよく面倒をみるなど。
 子どもは何か取り柄を持っています。それを見つけることができたときが,親としての免許が子どもから交付されるときです。

(No.25:リビング北九州:97年9月6日:1221号掲載)